・天然ヒノキは誰のもの

信濃毎日新聞より 木曽ヒノキの森

 木曽谷に広がる国有林の木曽ヒノキ伐採をめぐる記事が、先月14日の信濃毎日新聞に掲載されていた。

中止を求める環境団体と、天然林の更新を目的とする林野庁の主張が激しくぶつかり合っている。


木曽郡王滝村国有林では、一辺25mほどに伐採される「群状択伐」が行われている。

森に光が通り稚樹が育つ環境をつくると、森林管理署では説明している。

伐った痕には地面に種が落ちて自然に育つ「天然更新」を待つことになるのだが、これには疑問があります。


伐採が問題視されている木曽ヒノキは「天然」なので、人工的に天然更新させること自体が間違っている。

さらに、専門家の調査によると、伐採後に次世代ヒノキが育っていないばかりか、伐採の対象になっているのは元気な木であったというのだ。


「天然更新」は建前で、本音は一般ヒノキの25倍の高値がつく木曽ヒノキの伐採によって得られる利益が目当て。

林野庁は、一兆三千億もの巨額の債務残高を抱えていることから、07-11年度に四万立方メートルもの木曽ヒノキ伐採を盛った木曽地域の森林計画をまとめている。


木曽地方ではかつて、豊富に伐採される天然ヒノキで地元の木材業が潤った時代がある。

しかし、天然樹木資源の枯渇が危惧されたことによる伐採減少で、最盛期の4割程度にまで事業者が減っている。

地元の産業と文化を守る必要も感じられるが、あくまでも前提は天然資源の存在に影響を与えない範囲に限定されるべきです。

三百年の歳月をかけて育った天然木曽ヒノキを一部の利益のために枯渇させてはならない。


森と林の違いは一般的に、天然が森で人工が林といわれています。

産業維持のためには、十分に活用されていない人工林を対象にすべきで、利益の高さから天然の森に手をつけさせる行為は制限すべきだと思う。


天然の森の管理は林野庁ではなく、環境省に移管すべき時代がやってきている。

林業のための樹木から、地球環境の担い手としての森林へ価値と役割が変わってきたことを国も認めなければならない。