・光市母子殺害を取り巻く身勝手

元少年への死刑判決を受け、記者会見する本村洋さん=22日午後0時31分、広島市内のホテルで光市の母子殺害事件の高裁判決に対しては、さまざまな意見があります。

地方紙(信濃毎日新聞)は、ジャーナリストの筆を借りて間接的に判決を批判する姿勢を見せています。

今日の紙面でも、加害者の利益をないがしろにした関係者との視点で批判しています。


裁判で違和感を感じるのは「加害者の権利」が重要視されることです。

殺人事件の場合、最も権利が侵害されたのは命を奪われた被害者であって、加害者が主張すべき権利は被害者が受けた権利の侵害に比べたら取るに足らないと思います。


しかし、死んだものは生き返らないのだから、生きている加害者の権利(主に人権)を重んじるのは当然、といった考え方が多いように感じられます。

今回の事件で、遺族の本村さんが活動したことにより、加害者に比べて弱かった被害者の権利が見直されました。

当然のことが今まで行われていなかった法曹界の非常識が浮き彫りになったと思います。


また、裁判で事件の詳細を明らかにするのは死者をはずかしめるとの考え方もあるようですが、死者が失った権利を明らかにしなければ無駄死になってしまうかもしれません。

罪を裁くには、罪の詳細が明らかにならねばならず、被害者は何倍もの苦しみが積み重なるのが裁判だと思います。

被害者に落ち度がない限り、その責任もすべて加害者が負うべきものです。


今回の判決は、被害者の苦しみに重点をおいた点が評価できると思います。

加害者が罪を軽くするために、「障害」を武器にする弁護側の戦術を真っ向から否定した見事な判決でした。


弁護の中心人物だった安田弁護士は、死刑廃止で有名ですが、他の事件で有罪となった「札付き弁護士」です。

資産隠しを指南したとされ、東京高裁で23日に有罪判決を受けています。

判決理由の中で裁判官は「弁護士として法廷手続きをとるのが責務なのに、巧妙な妨害策を助言して実行させた」と述べています。


光市母子殺害事件最高裁の公判以降の展開をみれば、安田弁護士の法廷戦術が『巧妙な妨害策』であったことが伺えます。

被害者が受けた甚大な被害に対して、これに真正面から向き合おうとせず、加害者と弁護士の権利を勝ち取るために法廷を利用した悪徳弁護士だと思います。


本村さんの奥さんは生き返りませんが、奥さんがもっとも信頼し一緒に生きていこうとしたのはご主人である本村洋さんです。

彼にのみ、被害者である奥さんの気持ちを代弁する資格があり、彼よりも奥さんの気持ちを理解できる人がいるはずがありません。

なので、心情的に今回の事件を非難するのは無意味だと思います。(考えるのは自由ですが)


大事なのは、極刑があることで重大犯罪を抑止している今の司法制度を機能させることです。

死刑がその役を果たせないとすれば改善の余地があると思いますが、今回の裁判を見ても、事件の重大さと極刑の重さを社会に示し、犯罪の抑止に生かすという関係者の思惑は見えてきません。

裁判を闘った本村さんが求めているのはこのことだと思うのですが。