・風力発電を伊那市長が非難

伊那市の入笠山一帯で計画されている大型風力発電伊那市長が反対を表明しました。
しかし、伊那市議会は推進の陳情を採択し、風力発電に賛成の民意を表しています。


この問題では、18日の市会総務委員会で建設中止を求める陳情が採択されたが、
20日の本会議では中止を求める陳情は否決され、推進の陳情が賛成多数で採択されました。
ところが、全員協議会で小坂市長は計画を非難。


風力発電の賛否が二転三転し、民意と議会、さらに市長の意見がねじれ現象を起こしてしまっている。
この原因はどこにあるのでしょうか。
推進・反対双方の根拠に問題がありそうです。


反対派の論拠は、「開発にともなう工事によって、自然破壊や災害誘発の恐れがある」
推進派は、「工事用道路は林道として利用でき、観光面でも期待が出来る」
そして、反対を表明した市長は、

観光や地域活性化起爆剤になるとは一概には言えない。
景観面からも高台に巨大な建造物を立てるのはいささか疑問を抱く


誰一人として、地球環境はおろか地域の温暖化防止対策を重要な要因としてあげていない。
議会の論戦を見ても、建設中止の陳情に賛成する議員は「建設すれば(二酸化炭素を吸収する)緑を大量に失う」、
反対の議員からは「建設受け入れ拒否は、伊那市から全国に地域エゴを発信することになる」などと主張し意見が対立。


伊那市自然エネルギー利用から見れば、地域内で水力発電が67%の電力需要を賄っていることが、
市長の反対の裏づけとなっているようだが、エネルギー問題は限定された地区内の問題ではない。
市長は上伊那広域連合長の重責も担っていることからすれば、上伊那のエネルギー供給を見据えて論議しなければならない。


折りしも英国では気候変動と経済に関する首相と財務大臣に報告されるレビューが発表されています。
http://www.uknow.or.jp/be/environment/environment/07.htm
対応策を講じなかった場合の気候変動によるリスクと費用の総額は世界のGDPの20%に達する可能性があるが、
早期に対応した場合は1%程度で済むと指摘されています。


推進派は、目先の利益である道路工事や固定資産税に惑わされることなく、
自然エネルギーの利用を進めなかった場合の将来の損失を理論付けて説明することが求められます。
反対派は、限られた利益である景観等の自然環境を保護したつもりでも、
結果として気候変動により保護したはずの自然が破壊される危険性に気が付く必要があります。


推進・反対双方ともに、科学的知見への理解が乏しすぎる。
さらに、伊那市長においては行政のリーダーとして地球温暖化問題に対する知識が不可欠であるにもかかわらず、
現状では、「無知」であることをさらけ出している。


地球温暖化防止は、今に生きるすべての人の責任で解決しなければならない問題です。
ぜひ、理解できていない人はスターンレビューを読んでください。
スターンレビュー(PDFファイル)

*1:スターン・レビュー ‐ 気候変動と経済:概要直ちに確固たる対応策をとれば、気候変動の悪影響を回避する時間は残されている。今や、気候変動の科学的根拠は否定しがたい。気候変動は地球全体に対する深刻な脅威であり、世界的規模の緊急な取り組みが必要とされている。本報告書は、気候変動がもたらす影響とその経済的費用に関する証拠を収集し、多様な方法を用いてコストとリスクを査定したものである。そして、これらの観点から辿り着いた結論は至って単純である‐早期に断固とした対応策をとることによるメリットは、対応しなかった場合の経済的費用をはるかに上回る。気候変動は、飲料水、食料生産、健康、環境など、世界中の人々にとって生活の基盤となる全てのものを脅かす。地球温暖化が進むにつれ、何億もの人が飢餓や飲料水不足、沿岸洪水の被害を受けるだろう。公式な経済モデルの結果を使って本報告書が推定したところによれば、対応策を講じなかった場合の気候変動のリスクとコストの総額は、現在および将来における世界各年のGDP の少なくとも5 ㌫に値し、より広範囲のリスクや影響を考慮に入れれば、損失額はGDP の20 ㌫もしくはそれ以上に達する可能性がある。これに対して、気候変動の最大要因である温室効果ガスの排出量を削減するなど、対応策を講じた場合の費用は、世界各年のGDP の1 ㌫程度で済むであろう。ここ10~20 年間における投資が、21 世紀後半と22 世紀の気候を大きく左右することになる。現在およびこの先数十年間における人間の活動が、経済と社会的行動に大混乱をもたらし得る。そのスケールは、2 つの大戦および20 世紀前半の世界恐慌に匹敵する。いったん起きた変化を元に戻すことは、非常に困難もしくは不可能である。したがって、確固たる早期対応策が明らかに必要とされる。気候変動はグローバルな問題であるがゆえ、世界中の国々の対応が不可欠である。その対応とは、長期的ゴールに向けての共通ビジョンと、今後10 年間の対応策を促進するための枠組みへの合意の両方を基盤としたものであり、さらに、国、地域、国際レベルで相互強化を図れるような取り組みの下に築かれなければならない。気候変動は、経済成長と開発に非常に深刻な影響をもたらし得る。排出量削減のための対応を怠った場合、既に2035 年には大気圏内の温室効果ガスの濃度は産業革命以前の倍となり、世界の平均気温が2 度以上上昇すると予想されている。長期的に見れば、平均気温が5 度以上上昇する可能性は50 ㌫強となる。この気温上昇は危険以外の何ものでもない。なぜなら、この上昇率は、最後の氷河期の気温と現在の平均気温の差に匹敵するからである。これほど急激な国際レベルの自然地理学的変化は、人々がどこでどのように生活するかという人類地理学にも大きな変化をもたらすこととなる。もし温暖化がもっとゆっくり進んだとしても、気候変動が世界の産出高や人間の生活および環境に深刻な影響を与えることに変わりはない。天候変化のパターンが地STERN REVIEW: The Economics of Climate Changevii域や産業部門に与える影響に関する綿密な研究に始まり、国際規模での経済的影響にいたるまで、あらゆる証拠が如実に物語っている。気候変動の影響を受けない国はない。弱い立場にあるもの、つまり貧しい国や人々は、地球温暖化の原因にほとんど関与していないにも関わらず、一番先に大きな痛手を被るだろう。洪水、干ばつ、嵐を始めとする異常気象に起因する経済的費用は、国の貧富にかかわらず上昇している。回復力強化のための措置をとったり、費用を最小限に抑えるなど、気候変動に順応していくことは不可欠である。この先20~30 年間に起こる気候変動を食い止めることはもはや不可能だが、気候変動から我々の社会や経済を守ることはある程度可能である。それには、より正確な情報の提供、計画の改善、気候変動に強い作物やインフラの開発などが挙げられる。気候変動への適応には開発途上国だけでも年間数百億ドルかかると言われ、それでなくとも乏しい資源に更なる負担がかかる。特に開発途上国における適応策に拍車をかけることが望まれる。気候安定化のための費用は決して低くはないが拠出可能な額である。対応の遅延は危険なだけではなく非常に費用がかかる大気中の温室効果ガスを、450~550ppmCO2e(二酸化炭素排出相当量)のレベルに抑えられれば、気候変動がもたらす最悪の影響はかなり減少する。現在のレベルは430ppm CO2e であり、年間2ppm 強の増加を見せている。この幅に抑えるには、2050年までに現在の排出量レベルを少なくとも25 ㌫、恐らくそれ以上削減する必要がある。究極的には、年間排出量を現在のレベルから80 ㌫以上削減しなければ、どのようなレベルであろうとも気候の安定はあり得ない。これは難しい課題ではあるが、長期間にわたり継続的な対応策を講じることで、何もしなかった場合のリスクに比べればずっと低い費用で達成が可能である。今すぐに強行な対応策を講じた場合、500~550ppm CO2e に抑えるための費用は世界の年間GDP の約1 ㌫と推定される。エネルギー効率性の抜本的改善もしくは空気汚染の減少などの相互メリットを考慮に入れれば、費用は更に低くなる。逆に、低炭素技術の開発が遅れたり、政策立案者がいつでもどこでもどのような方法でも一番安い方法で排出量の削減ができるような経済手段を作成しなければ、費用は高くなる。現時点でさえ、450ppm CO2e に抑えるのは非常に困難で多額の費用もかかる。対応が遅れれば、500~550ppmCO2e に抑える機会さえも逃してしまうだろう。全世界の国々に気候変動への対応が求められているが、富かな国・貧しい国を問わず、経済成長への熱意を妨げるものではない。対応策にかかる費用は、産業部門や各国に均等に分配されるわけではない。豊かな国々が2050 年までに排出絶対量を60~80 ㌫削減することを確約したとしても、開発途上国も大幅に削減することを求められる。しかし、開発途上国は削減にかかる費用全額を捻出することを要求されるべきではないし、そうはならないであろう。豊かな国々の炭素市場は、低炭素開発をサポートすべく既に資金の流動を始めており、STERN REVIEW: The Economics of Climate Changeviii「クリーン開発メカニズム」(CDM)もその一つである。そういった流動の変化が、大規模な対応策を支援するために今や必要とされている。また、低炭素エネルギー技術や低炭素商品・サービスの新市場ができていることから、気候変動への対応策はビジネスの機会を生み出す。これらの市場は年間何千億ドルのビジネスへと発展し、それに伴い雇用機会も拡大する可能性がある。世界の国々は、気候変動の回避をとるか経済成長と開発をとるかの二者択一を迫られる必要はない。エネルギー技術と経済構造における変化は、経済成長と温室効果ガス排出を切り離す契機をもたらした。つまり気候変動を無視することは、まさしく経済成長に損害を与える結果につながる。気候変動への取り組みは長期的な経済成長政策に肯定的であり、豊かな国・貧しい国を問わず、経済成長への熱意を妨げることなく実施することができる。排出量を削減するためにできることはたくさんある。実践したいと思わせるには、熟考された政策が必要とされる。エネルギー効率性の改善、需要の変化、クリーンな電気・熱エネルギー・運輸技術の選択などで、排出量の削減が可能となる。大気中濃度を550ppm CO2e もしくはそれ以下で安定させるためには、世界の電力業界は2050 年までに少なくとも60 ㌫脱炭素化する必要があり、また、運輸業界は排気ガスの大幅な削減をしなければならない。再生可能エネルギーやその他の低炭素エネルギー源の使用量が大きく伸びたとしても、2050 年における世界のエネルギー供給量の半分以上は化石燃料が占めていることも予想される。世界で使われる様々なエネルギーの中でも石炭は重要な役割を果たし続け、それは経済が急成長を遂げている国にも当てはまるだろう。大気に損害を与えずに化石燃料を使用し続けるには、大規模な炭素隔離貯留(CCS)が必要となる。同様に、森林伐採や農業・工業プロセスの結果として起こる非エネルギー分野の排出量削減も不可欠である。熟考し確固たる政策を立てることにより、先進国も開発途上国も、経済成長を推進しながら、前述した安定化に向けての排出量削減目標を達成することが可能となる。気候変動はかつてない市場の失敗であり、その他の市場不完全要素と相互関係にある。国際的規模で効果的に対応するには、次の3 つの要素を政策に織り込まなければならない。第一は炭素価格の設定で、税金、排出量取引もしくは規制を通して実践する。第二に、低炭素技術の開発を支援し、実用化する。第三に、エネルギーのさらなる効率化の妨げとなっている障壁を取り除き、気候変動に対処するには一人ひとりに何ができるのかについて情報を与え、教育し、説得することである。長期目標についての相互理解と対応策の枠組みに関する合意をもとに、国際的規模で気候変動に対応することが不可欠である。既に、多くの国や地域が実際に対応策をとっている。欧州連合、カリフォルニア、中国などは、温室効果ガスの排出量を減らすための意欲的な政策をとっている。国連気候変動枠組み条約および京都議定書は国際協力の基本姿勢を示すものであり、STERN REVIEW: The Economics of Climate Changeix広範囲なパートナーシップやアプローチについても記述されている。しかし、今や、世界中で更に意欲的な取り組みが必要とされている。国によって様々な状況があるため、気候変動への取り組みに貢献するためにそれぞれ違った対処法を用いることになる。しかし、国単位の努力だけでは不十分である。それぞれの国は、例えそれが大国であっても世界全体の問題の一部にしか過ぎない。長期目標に向けて国際的共通ビジョンを作り上げ、各国がこれら共通目標を達成すべく、お互いに手を取り合えるような国際的枠組みを構築することが不可欠である。将来の国際的枠組みには、以下の主要素が含まれていなければならない。• 排出量取引:増加し続ける排出量取引制度を拡大し、相互に結びつけることは、費用対効果の高い排出量削減を推進し、開発途上国における対応を促す上で、非常に効果的な方法と言える。豊かな国の断固とした目標が年間何百億ドルという金額が流動する引き金となり、低炭素開発の道を切り開くためのサポートにつながる。• 技術協力体制:公式な合意はもちろんのこと、非公式な連携体制が世界各国による開発投資の効率性を高める。グローバルな観点でいえば、エネルギーR&D への支援は少なくとも倍増し、新開発の低炭素技術を実践するための支援は5 倍になると予想される。国際的な製品基準を作ることは、エネルギー効率改善を高める上で非常に効果的な方法である。• 森林伐採を減らすための対応策:世界中で自然森林が失われていき、それに起因する年間排出量は運輸部門よりも多くなっている。よって、森林伐採に歯止めをかけることは、排出量を減らすために非常に費用対効果の高い方法である。最善の実施方法を決めるための大規模な国際パイロットプログラムに着手するには、それほど時間はかからないはずである。• 適応策:気候変動の影響を最も受けやすいのは貧しい国である。それらの国の開発計画に気候変動を完全に組み込み、豊かな国は確約を守り、海外開発援助を通じて支援を増強することが不可欠である。また、世界から集まった資金は、気候変動が各地域に及ぼす影響に関する情報の充実や、干ばつや洪水に強い新品種を作るための調査にも充てられるべきである。