・特急内で女性暴行を見て見ぬふり

サンダーバード

 21日に報道された「<強姦>特急内で暴行、容疑の36歳再逮捕 乗客沈黙」の記事。
にわかには信じがたい思いに愕然とした人が多かったと思います。


 女性がトイレに連れて行かれる途中、付近の乗客は植園容疑者に
「何をジロジロ見ているんだ」などと怒鳴られ、車掌に通報もできなかったという。
社会全体のモラル低下が懸念されていますが、この事件の傍観者はあまりにもひどい。


 事件は、昨年の8月3日、JR北陸線の富山発大阪行きの特急「サンダーバード」の車内で発生しました。
植園容疑者は、午後9時20分ごろ、福井駅を出発した直後に、6両目の前方から2、3列目にいた女性の隣に座り、
「逃げると殺す」「ストーカーして一生付きまとってやる」などと脅し、繰り返し女性の下半身を触り、
さらに、京都駅出発後の午後10時半ごろから約30分間にわたり、車内のトイレに連れ込み、強姦しました。


 同容疑者は強姦の常習者で、昨年12月21日、JR湖西線の普通電車内で女性(同27歳)に強姦し、
さらに大津市のJR雄琴駅で電車を降り、同駅のトイレに女子大学生(同20歳)を連れ込み、強姦しています。
未成年の頃から強姦犯罪の常習者だったようですから、司法の欠陥が今回の事件を引き起こしたともいえます。


 それにしても、40人もの乗客が、被害者を救うために何の行動も起こさなかったという事実に震撼させられました。
命を懸けてまで静止しろとはいいませんが、車掌に通報するのにどれほどの危険が伴うのでしょうか。
トイレで行われている惨劇を同じ車内で共有しながら、何もしないでいられる精神構造が信じられません。


 娘たちに、この事件をどうやって話そうかと、妻と相談しました。
傍観者が行動を起こさざるを得ないほど、強く助けを求める意思を持たせることくらいしか思い浮かびません。


 犯罪に直面しても関与を避ける事なかれ主義の人も、少なからずいるとは思いますが、
40人の乗客すべてがそうだったのは、被害者があまりにも運が悪すぎると言っては不謹慎かもしれません。
しかし、そうでも解釈しないと、理解が困難です。


 犯罪に遭うのは運が悪いからかも知れないが、自分だって、いつ・どこで、運悪く遭遇するのかもしれません。
運の悪さは、すべての人に等しく遭遇する可能性があります。
運が悪くても、事件に巻き込まれない社会をつくならなくてはならないのに、犯罪者にも人権があって、犯罪を誘発する社会構造になっている。


 犯罪者の人権を聖域としない司法の良識が発揮されるように、市民が声を上げる必要を感じます。