・伐採のカラマツで小学生が重傷

一日、上田市の雑木林で、伐採したカラマツが見学していた小学生に当たり、重傷を負う事故が発生しました。

信濃毎日新聞に伐採した現場の写真が掲載されています。


事故現場がどの程度保存されているのかはわかりませんが、写真から判断すると、伐採した男性は重大な過失をしていると考えられます。

「つる」がない

画像をクリックすると拡大しますが、切断面の矢印で示した部分に、本来なら「つる」と呼ばれるものがなければなりません。

つるとは、伐採した木が倒れる時に蝶番の役割を果たし、狙った方向と違う方向に倒れないようにする大事な役割があります。


しかし、画像で見る限りでは、切り株にも、伐採された丸太の切断面にもつるの厚みが確認できません。

考えられるのは、追い口を切り込む際に、行き過ぎてつるとして残すべき部分まで切りすぎてしまったかも。

こうなると、受け口の方向に倒そうと考えていても、支持を失った木は重さや風の力の方向に自由に倒れてしまいます。

受け口がない

画像の右側の矢印には、本来なら受け口が開口していなければならない。

受け口とは、伐採した木を倒す方向に倒れやすくするための三角形の切り込みです。


ツルが支点となって、受け口の角度までは伐採した木はスムースに倒れるはずです。

受け口の角度を使い切ると、ツルが破断しますが、その時には、木はほとんど倒れる寸前です。


写真をよく見ると、受け口を切り込んだ線が見えるので、受け口を切ったものの、取り除くべき三角形の木片を残したままで、追い口の切断に取り掛かった疑いがあります。

受け口で切り捨てられた三角の木片は、完全に切り離されていれば、追い口の切断で木が倒れると同時に排出されるかもしれませんが、通常ならそんなことはしません。

もし、受け口の開口を確認せずに、追い口を切り込んだとすれば、まったくの初心者か、腕を過信した経験者のどちらかだと思います。


報道によれば、伐採した男性の職業は造園業となっていますが、一般の人の感覚からすると「造園」=「木を伐る」と思われがちですが、庭師でも樹木の伐採に精通している職人は多くはありません。

知り合いのベテラン庭師が、60cmほどのクリの伐採ができないから、私に頼んできたこともあるくらいで、伐採の技術を持っていない庭師がいても不思議ではない。


今回の事故現場の写真を見ると造園業の男性は、チェーンソーが使えて木を切ることもできるが、伐採の基本が身についていなかったのではないかとの疑いが濃い。

大勢の小学生が見学している現場だったのなら、伐採方向にロープで引いておく安全対策は不可欠だったはずです。


木の伐採で命を落とす人の多くは、木の切り方は知っていても、伐り方を知らない場合が多いと思います。

事故に遭われた小学生の命が助かっただけでも幸いでしたが、事故を起こした男性がいくつもの過失を犯した罪は厳しく問われるべきだと思います。