・法律無視の村井県政を訴える

浅川整備計画公聴会:長野市浅川公民館

村井県政の象徴として、市民の主権を無視して進められている浅川の河川整備計画ですが、巨額の無駄な公共工事であることを見失わないために適宜取り上げていきます。

浅川の整備計画のために行われた公聴会の問題点について、読者からいただいた意見を公開します。

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 いささか旧聞に属するが、浅川の河川整備計画にかかわる公聴会は形式的であり、法律に定められた手順はふむが、法律の主旨を無視している実例を示して、長野県土木部の考え方が間違っていることを広く世の中に訴えたいと思う。
 浅川の河川整備計画案の公聴会での公述とこれに対する長野県の考えを以下に記載する。公述内容は公聴会の正式記録からコピーしたもので、県の考えからも公聴会の記録から書き写したものである。
 1.公述内容
 公述申出人1番
 長野市○○に住んでいます△△ △△です。本日公述させていただきます内容につきましては、基本高水に関する問題でして、この問題が本来、河川整備基本方針ということで、整備計画にかかわる問題として議論されるものではないということは重々承知しております。で、ありますが、この問題をきちっとクリアにしない限り、浅川の河川対策に対して根本的な解決は求められないという立場であえて公述させていただきます。
 浅川の河川整備計画で議論される外水対策の穴あきダム、内水対策としての排水ポンプの増強等は、正確な基本高水流量に基づいて検討されなければならない、というのは言うまでもありません。ところが肝心の浅川の基本高水450トン毎秒、治水安全度100分の1、これは100年に1回の洪水確率で雨量確率ではありません、としては過大であります。その原因は、計画雨量まで引き伸ばして得られる対象降雨からのピーク流量群の最大値を基本高水に決定しているということです。その他の原因としては、貯留関数法における飽和雨量が小さいということなどが挙げられます。
 不思議なことには、浅川の基本高水450トン毎秒は検証されていません。長野県土木部は、合理式と比流量で検証したとしていますけれども、合理式の検証は、ピーク流量群の最大値を基本高水にしているということに対しての検証はしていません。ピーク流量群の値を検証したに過ぎないんです。それから比流量は、対象の河川の計画規模とか環境が違いますから、これを比較して適切であるという判断をすることはできないわけです。国土交通省は検証を流量確率法で実施しようとしています。
 河川砂防技術基準によって基本高水を決定しますが、今のやり方では、ピーク流量群の最大値を基本高水にした場合、過大になる場合とならない場合があるんです。これは今のやり方でモデル洪水のサンプリングの仕方が適切でないというか、必然的に適切なサンプリングができないような仕組みになっているんです。それは具体的には引き伸ばし率を2倍程度にしているということで、どうしても偏ったサンプリングしかできないというような状況があるわけです。それで、そういうようなことにつきまして、適切なサンプリングをすることによって、この問題を解決することができるというふうには思っています。
 さらには、そのように適切なサンプリングをしたものに対して、統計的に確率分布を想定して、最大値を基本高水にせずに適切な洪水確率、治水安全度ですけども、例えば治水安全度100分の1とか、200分の1の流量はどのぐらいだと、ではこれを基本高水にしようということにすれば、適切な合理的な基本高水が決定できるわけです。それで現在、私の計算によれば、基本高水は治水安全度100分の1の基本高水は、270トン毎秒から280トン毎秒ということで、とても450トンにはならないんですね。
 先ほど言いましたように、基本高水は流量確率法で検証するんですけれども、浅川の事例では、残念ながら流量のデータがほとんどないんです。したがって、実測流量による流量確率の検証は不可能です。ですけれども、年最大雨量から再現流量を求めて流量確率法を利用することは可能です。これは非常に幸いなことに、長野地方気象台発表の1976年から2005年までの30年のデータで、年最大雨量から求めた再現流量で治水安全度100分の1のピーク流量を求めたところ、やはり270トンとか280トン毎秒ということになって、450トン毎秒にならないんですよ。この問題をとにかくきちっと正確に基本高水を把握しない限り、適切な浅川の治水対策は立てられないと思っています。
 ここで長野県土木部には、再現流量による流量確率法で浅川の治水安全度、100分の1における基本高水の値を検証することを要望して、公述を終わります。以上です。
 以上の公述に対する長野県土木部の考えは次の通りである。
 2.上記に対する長野県の考え
 浅川の基本高水流量は、過去の雨量データを基に、一般的に用いられている手法により算出した流量です。また、この流量は、単に対象降雨の降雨量だけで決めるのではなく、雨の降り方(時間雨量)等を考慮して決定されるものです。従って平成16年10月の台風23号のように、計画雨量に近い降雨があってもしても、基本高水流量と同じ流量になるとは限らないため、このことをもって基本高水流量の見直しが必要であるとの断することはできません。
 この考え方が私の公述内容に対する回答になっていないことは明らかである。
 私は一般的に用いられている手法として引用した河川砂防技術基準にしたがって基本高水を決定しても、過大になる場合とならない場合がある、浅川の場合は過大になっているから、再現流量による流量確率で検証することを提言しているのに、一般的に用いられた手法により算出した流量だからだ間違いないと回答するだけで、過大であるか否か検証することを提言していることには、まったく答えていない。
 更には別の公述人からの平成16年10月の台風23号の際、計画雨量に近い降雨があったが、基本高水から計算した流量の1/6程度の流量しか観測されなかった、これは基本高水が過大である証拠であるとの発言を逆用して、実測流量が計算流量の1/6であることは、雨の降り方によってはあり得るの立場で反論している。
 浅川の基本高水を計算した過程で、計算流量は最小値で226トン毎秒から最大値440トン毎秒と分布しているが、その比は1/2程度であり、雨の降り方の違いで1/6が全部説明は出来ないのである。浅川の基本高水450トン毎秒が過大であることには、少なくとも計画雨量まで引き伸ばして得られる対象降雨からのピーク流量群の最大値を基本高水に決定していることが大きく影響していると考えざるを得ない。
 ここで浅川の治水安全度1/100における基本高水450トン毎秒を再現流量で検証すべきとの提言に対して長野県土木部が答えなかったことに猛省を促したい。
 そもそも浅川の河川整備計画の基礎になる治水安全度1/100、基本高水450トン毎秒は長野県土木部によって決定されて以来外部機関で審議されていない。長野県知事が河川管理者である一級河川については、長野県河川審議会で審議なれなければならない。長野県では河川審議会が組織されたことはなく、県条例によって組織された長野県治水・利水ダム等検討委員会がその機能を代替したと見られないこともないが、同委員会が答申した基本高水330トン毎秒は何故か受け入れられなかった。つまり治水安全度1/100、基本高水450トン毎秒はノーチェックの状態で河川整備計画が立案されている。
 再現流量による流量確率で基本高水を検証し、適切な基本高水決定出来たら浅川の外水災害に対する河川整備計画は河川改修で十分であるとの結論になり、穴あきダムの議論など消滅してしまう。
 ここで長野県河川審議会を組織し、専門家集団で基本高水の議論を進め適切な数値を決定することを村井知事に提案したい。
 適切な基本高水を決めるためには適切な治水安全度を決定する必要があるが、適切な治水安全度、100年に一度の洪水を前提にするか、200年に一度の洪水を全体にするかは、住民参加で決定する法的整備が必要になる。新しい河川法はそのような住民参加が可能になるようなものでありたい。
 尚以上の文章で引用の関係で基本高水流量と基本高水が混用されているが、同じ意味であることをお断りしたい。
                            以上