・原発に沸いた町に消えた炭鉱の影

火災が発生した東京電力刈羽原発原子力発電所による被害は、放射能によるものだけに限りません。

誘致した自治体に一時の夢を与える反面、奈落の底にも突き落とす。

刈羽原発のある新潟県柏崎が、その典型的な財政破綻に見舞われています。


柏崎市はかつて、「裕福な自治体」だった。

全盛期は95年度。柏崎刈羽原発の1〜5号機で運転が始まり、6、7号機も建設が進んだ結果、巨額な電源三法交付金が流れ込み、公共施設が次々と建った。

1万5千人を収容できる球場に、プラネタリウムを備える博物館、国際級のインドア大会が開ける総合体育館、郷土玩具を集めた柏崎コレクションビレッジ、県立図書館の2倍以上の利用者数を誇る図書館など。

市が新潟工科大に設置経費として30億円を寄付したのも95年度。

「夕張のテーマパークとは違い、必要な施設。ただ、電源三法交付金がなければ、未来永劫(えいごう)できなかったかも知れない」と市財政課職員は言ったそうだが・・・。


ところが、95年を過ぎると、財政は徐々に下降曲線をたどり始める。

最大の原因は固定資産税の減少であり、95年度には約127億円だった原発の固定資産税収入は、減価償却によって毎年約5億円ずつ下がり続け、13年度には約31億円にまで落ち込む見通し。

そこへとどめを刺したのが震災です。


震災後、市は復旧費用として400億9千万円の補正予算を組んだが、07年度の当初予算465億9千万円に匹敵する出費を余儀なくされた。

国や県からの補助では賄えないため、75億円分の地方債を発行するのに加え、国の財政融資資金から約130億円の借り入れが必要になるとみられている。


借金が増えた一方で、歳入は大幅に減った。

最も影響が大きいのが原発の停止。

原子炉が動かず、新たな核燃料が装填されないため、県を通じて市に配分されるはずの核燃料税の約5億円が消えてしまった。


さらに、東京電力が28年ぶりに赤字に転落する見通しになったことで、昨年度は4億円納税されていた東電からの市税の法人税割も入らなくなる。

07年度当初の同税収入の見通しは約17億6千万円だから、市はその約4分の1を失うことになった。


電源三法交付金で作った施設の存在が市財政を圧迫し始めている。

これらの施設の維持管理費のために、市は毎年、一般会計の15%前後を支出しているからです。


多額のお金をばら撒いて、原発バブルを引き起こして善悪の見境をなくさせ、夢見心地で原発の恩恵に浸ったのもつかの間。

バブルがはじけ始めると一気に現実の厳しさに直面し、富裕自治体から財政再建団体へ転落してしまう。

自然災害に弱い原発の新たな一面が垣間見られる。


原発を持つ町に炭鉱の町の歴史が重なって見える。

栄華の後に待つものは・・・。

柏崎の財政職員は「夕張とは違う−−。」と言ったが、待ち受ける運命は同じだと思います。


今だけが良ければそれで好い。

原子力というエネルギーと、それがもたらす影響は、すべて一過性であって、将来に多大な禍根を残す運命にある。