・異例に早い当確に対応して

長野五区では民主党の加藤学が当選した。

投票締め切り直後の8時に「当確」がテレビから出たのには、正直言って驚かされた。

その舞台裏を一部ですが、教えちゃいましょう。


長野五区では、民主党の優勢が当初から伝えられていました。

一部の報道機関からは、「民主党の開票を見る会は、報道特番開始の午後8時には集まっていた方がいい」との声もあった。

しかし、民主党として勝利したことがない選対としては、開票が始まる前に当確が出ることなど思いもつかぬことで、精一杯頑張って8時30分に見る会を設定していた。


ところが、当日の午後になって出口調査の結果が入り始めると、「9時には加藤学の当確が出るようだ」との情報があちらこちらでささやかれ始めました。

さらに、午後6時30分過ぎには、一部の報道機関の出口調査の結果がまとまり、「民主党の長野選挙区は5人全員が8時直後に当確が出るかもしれない」とまで、状況が切迫してきました。

当確が出ても候補がいない、支援者もいないという最悪の状況が切実となります。


陣営では、候補を急いで会場周辺に待機させるとともに、支援者には「早めの会場入り」を促します。

まさか、当確が何時に出るなどということは言えるはずもないので、「早く出たら困るから」と急がせます。

7時30分までには、選挙特番の放送開始直後に加藤学の当確が放送されることが「確定」したようです。

会場内では、当初予定していた段取りから変更し、異例に早い当確の報道に備えます。


かくして8時03分、テレビ信州と長野朝日放送で「加藤学が当確」と速報が流れます。

候補が待機する近くの事務所に電話するもつながらずに伝令が走ります。

候補が会場に向かうとともに、会場で待ち受ける報道陣に「候補者入ります!」とキューが出される。

こうして、盛大な拍手に向かい入れられて候補者によるバンザイが無事に行われるのです。


現場の報道陣は、当確がいつ出るかなんてことは陣営には漏らしません。

洩らしちゃいけないことになっているからです。

でも、漏れてこないと現場は準備ができない。

各方面からのギリギリの情報収集があってこそ、スムースな万歳会場の運営に辿り着くんです。


選挙にかかわっている陣営の面々でも、ごく一部の関係者以外は、裏方の苦労を知ることはないと思います。

候補者だって知らないし、ましてや一般の有権者にはそんな裏舞台があることは全く伝わることはないと思います。


開票が進んでから、その数字を追いつつ当確の出るのを待つ、通常のバンザイのケースならこんな熾烈な情報収集は必要ない。

しかし、今回は歴史的な民主党の大勝に触発されたのか、報道各社の当確早出し競争は異常なまでに熱を帯びていた。

選挙に勝つことにもつながるが、情報をいかに素早く、正確に、多角的に集めて、的確に分析するかで現場の出来が左右される。


経験と勘に頼った旧来型の選挙戦術だけでは勝ち抜けない現代型の選挙ノウハウというものが、これからはさらに重要視されていると思う。