・リニアBルート主張で失うもの

JR東海が建設を計画するリニア中央新幹線について、県議会公共交通対策特別委員会は7日、地域振興に資する整備促進を求める決議案を賛成多数で可決した。

推進を求めるルートは明示しなかったが、諏訪・伊那谷経由のBルート推進をにじませた。

9日の本会議でも可決する見通し。 =2009-10-8 長野日報


Bルートの整備促進に「長年にわたり官民一丸となって取り組んできた」と経緯を上げ、ルートについては「(県内で)より多くの県民が利用でき、地域経済の活性化に大きく寄与するルートや複数駅の実現が望まれている」と盛っている。

地域の代表として選ばれていると思い込んでいる県議会議員にしてみれば、国家プロジェクトだろうが地利地欲で臨むのが当然ということだろう。

南北に長い長野県だから、南端をかすめるJRの直線ルートだと大半の地域が「阻害されている」と被害者意識が芽生えてしまうからだ。


しかし、南信の住民から見れば、北信には新幹線があり、中信には最短距離で都心に行ける高速道路があるし、空港も特急列車もある。

南信には、超ローカル線の飯田線と諏訪を迂回する高速道路しかない。

もともとが北高南低だった。


リニア新幹線が南信を通るのは、順番からすれば少しもおかしくないし、これまで優遇されてきた北信があれこれ言う資格は微塵もない。

中信に至っては、古くから空港を持ち、交通僻地として長らく我慢を強いられてきた南信とは違って恩恵にあずかってきた。

松本空港が閉鎖される可能性が高まったからといって、リニアを迂回させようというのは地域エゴだ。


長野県内の交通整備の歴史からすれば、やっと南信の番が回ってきたわけであって、他の地域から横やりを入れられる筋合いは全くない。

Bルートという迂回ルートが検討されてきたのは、トンネル工法が困難と見られてきた過去の技術力が前提となっていたからだ。

技術革新が進んで前提が変わったら、過去の計画は白紙に戻すのが現政権の考え方でもある。


長野県は既存の計画を見直すことに極めて消極的だ。

リニアに限らず、浅川ダムでは民主党系議員でも計画通りに進めろという。

国としては政権交代かもしれないが、長野県はいまだ旧態依然とした政治風土を守ろうとする悪しき保守が生きながらえている。


南アルプスにトンネルをあけることが自然環境の観点から良いことだとは少しも思わないが、狭い伊那谷にリニアの軌道が延々と敷設されるのでは環境負荷は大差ない。

在来平行線になってしまう飯田線が地域のお荷物としてJRから押し付けられるのも目に見えている。

ルートでエゴを通している暇があったら、重要な連絡線となる飯田線の複線化・高速化へ向けて条件闘争をしかけるべきだ。


JR東海からしてみれば、田舎者の議員の喚きは思うつぼだろう。

ルート問題で喧々諤々やっているうちに、政治決着で国家の利益優先で直線ルートに決まり、気が付いたら連絡線は高速道路利用にすり替えられてしまう。

地域交通網の将来が頭に入っていないおバカな長野県議会議員に任せておいては、南信の交通事情はやっぱり改善されなくなってしまう。