・メキシコ湾原油流出は史上最悪に


南部ルイジアナ州沖の石油採掘施設の爆発事故による原油の流出量が1日2万5000バレル(約400万リットル)に上る可能性がある。

早期に食い止められない場合、1989年に起きた米史上最悪のアラスカ沖での原油流出事故を上回る大惨事となる恐れもある。

オバマ政権高官は30日、約1カ月前に発表したばかりの新規油田採掘計画の凍結にも言及するなど、事故の影響は拡大する一方だ。


この事故は、先月20日、メキシコ湾の海底油田を掘削していた施設が爆発、炎上し、作業員11人が行方不明になっているほか、発生から10日たった現在も海底油田からの原油の流出が続いている。

施設を管理するのはイギリスの大手石油会社「BP」というエンジンオイルの有名ブランドで、深さは約5486メートルにまで達するという。


現場海域に近いルイジアナ州などの沿岸部は、米国のリゾート地として名高いほか、エビやカキなど世界でも有数の魚介類の産地でもある。

深刻化する事態を受け、オバマ大統領は29日、採掘権を保有するBPに原油除去の基本的な責任があり、費用もBPが負担すべきだとの認識を鮮明に打ち出した。

ただ、海底油田の新規採掘を承認した際には、「環境よりも国産原油増を優先した」との批判も噴出。

事故では野鳥や海洋生物への影響も懸念されており、新規採掘計画への批判がさらに高まる可能性もある。


化石燃料を無理して手に入れようとすると、このような事故は必然的に発生する。

現代の私たちの生活は、こうした自然破壊の上に成り立っていることを自覚するべきだ。

事故が発生するリスクは統計的には少ないかもしれないが、万が一起きてしまった時の影響は地球規模で甚大だ。

環境リスクの捉え方を見直した方がよいのではないか。


同じく環境リスクが高い原子力も、電力供給の恩恵だけがめにつくが、事故が発生した時の被害は原油流出の比ではない。

これほど高いリスクのうえに原子力の電力は成り立っているのだということをほとんどの日本人は持ち合わせていない。

節電と自家発電で電力需要を抑制しない限り、地球を破壊する事故の発生頻度を下げることはできないのではないか。