・浅川ダムを検証する

TSBニュース

長野の浅川ダム建設問題についてコメントをいただきましたが、的確な検証内容なので読者投稿として掲載させていただきます。

浅川ダムが政治的に作られようとしていることを裏付ける内容です。

信濃川水系 長野圏域河川整備計画(淺川)案」を検討

淺川の河川整備計画案については地域首長への意見聴取を終了し、国交省へ申請の段階に入っています。最近淺川改良事務所のホームページから国交省へ申請する「信濃川水系 長野圏域河川整備計画(淺川)案」を入手し、その内容を検討しました。


 7頁の[外水対策]に以下の記載がありました。

「沿川の人口や資産の集積状況、流域内の土地利用の状況、災害発生時の社会的影響、他河川の改修規模とのバランスを考慮し、100年に1回程度の確率で発生すると予想される降雨により生じる洪水(千曲川合流点で1秒間につき450立方メートル)を安全に流下させることの出来る治水安全度を確保し、以下省略。」

この記載では治水安全度/100の表現が見事に消失しています。
100年に1回程度の確率の降雨から引き起こされる洪水は1秒間につき450立方メートルでなく、もっと小さなピーク流量であり1秒間につき450立方メートルの治水安全度は1/1000以下になると計算されます。


 治水安全度は雨量確率と同じであるとの誤解が広く行き渡っていますが、長野県土木部もその誤解を解く努力をまったくしていません。
治水安全度1/100は100年に1回程度発生する洪水についての確率で100年に1回程度発生する降雨の確率ではないのです。長野県土木部は意図的にこの混同を放置しているとさえ思っています。


 治水安全度が明確に記載されていない今回の河川整備計画案は国交省に受理されるはずはないと考えます。
もし国交省がこの程度の河川整備計画案を受理するならば、最近の河川整備基本方針検討小委員会で審議されている神奈川県相模川の基本高水決定に採用されている総合確率法に見られる、河川砂防技術基準による雨量確率から基本高水を決定する方法についての国交省や県レベルで真摯になされている改善の態度を否定することになります。


 私は長野県土木部に治水安全度1/100での基本高水が1秒間につき450立方メートルであるのは過大であり、統計的な手法を利用して合理的な基本高水を決定すること、現在の基本高水を再現流量による流量確率で検証することを再三再四お願いしていますが、結果的には治水安全度1/100での基本高水が1秒間につき450立方メートルは与件であり見直しはしないとの頑なな返事があるのみです。


 淺川について適切な基本高水が選択できたら、外水災害に関しては河川改修だけで対応ができ、穴あきダムの議論はまったく不要なことになります。

学識経験者の意見聴取

 淺川の整備計画案についての学識経験者の意見聴取はまたく形式的な手続きだったと受け取っています。
 学識経験者の中には水工学の専門家が入っていましたが、治水安全度1/100、基本高水450トン/秒に対応する方針に賛同しますと発言したのは水工学の専門家でなく、北信漁業協同組合理事長でありました。


 学識経験者の意見聴取の以前に開催された公聴会で過大な基本高水の決定に至った理由を公述し、学識経験者による討論を期待したのですがそのような期待はまったく裏切られました。
 漁業関係者が学識経験者ではないとおおそれた意見を申す気持ちはまったくありませんが、水工学、水文学の専門家が意見を述べるのが常識的な理解と言うものでしょう。


 しかし水工学の専門家が意見を言わなかったまたは言えなかったあたりを考えると、淺川の治水安全度1/100、基本高水450トン/秒が過大であることは学者の間でも暗黙の了解になっているのではないかと思います。
 国交省やある県レベルでは現在の河川砂防技術基準にとらわれることなく、統計的な手法を行使して合理的、科学的な基本高水の決定法を開発している現状です。
いつまでも旧態依然とした基準による基本高水の決定法を全国的に採用されているから間違いないとする長野県土木部の公式見解は早急に正されなければならないでしょう。