・担い手育成塾、第二回講座

林に入って、樹木の説明をする島崎氏昨日、担い手育成塾の第二回講座が開催されました。

講義は二人の農学博士による「里山の整備と生物多様性」、「山の健康状態を見る。樹木に親しむ」の2テーマです。

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午前中は、信州大学農学部の中村寛志教授が、専門の昆虫の分布調査から見た里山生物多様性の状況をご指導いただきました。

人が自然に介在する「中程度循環型攪乱」がもたらす、モザイク環境が多様な昆虫の生息を促すとする説明は新鮮でした。

ただし、里山を日々の営みの糧として活用してこその話であり、害虫防除が進んだ現在では生物多様性が低下しているとの指摘もありました。


身近な山、林、庭木を活かし、田んぼや畑に棲む多様な生物との関わりを考えて生態系を整えていくことは、新しい里山形成の重要な要素になると思います。

米や野菜を育てるのは、肥料や農薬ではなく、微生物から哺乳類に至るまでの多様な生態が生み出す土壌をはじめとした地域環境なのだとあらためて気が付かされました。

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午後は、島崎塾長の山荘の周りを散策し、樹木観察と、森つくりの考え方について学びました。

塾生の中には午前中の講義と絡めて「森林と生物多様性」について期待する節もありましたが、島崎氏は林学すなわち林業の専門家であって、森林生態学は専門ではないので無理な注文です。

地域住民と森林利用のあり方についてはご苦労されている様子がひしひしと伝わってきましたが、さらに一歩進んで森林に棲む多様な生物と地域環境のつながりにまで発展させるのは、容易ではないと思います。

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講座が終了してから車座になり、担い手育成塾の今後のあり方について懇談がありましたが、主催者と塾生の認識にはまだまだ隔たりがあり、今後の相互理解と協力が塾の成功には不可欠となりそうです。

理念や信条が異なる個性の強い塾生が、主催者の理念を共有するには時間がかかるでしょうが、次代を担う地域のリーダーを育成する必要性では共通していると思うので、悲観しなくてもいいでしょう。


しかし、「ここにいる人たちは誰一人知らないと思うが」などと、自分だけが知識を持っていると思い込んでいる独りよがりの意見を言う者がいたのは残念でした。

『他者が持つ、自分よりも優れたものを学ばせていただく』という当たり前の心がけがなくては、塾生相互で作り上げる信頼関係が生まれません。

主催者の手綱さばきに期待することにします。