・劉翔に見る中国の偽装金メダル

陸上男子110メートル障害1次予選で、スタート直後に棄権、痛みに顔をしかめる中国の劉翔。昨日、北京の鳥の巣は中国人の呆然とする顔で埋め尽くされました。

男子110メートル障害第1次予選で、国民的英雄のアテネ五輪金メダリストの劉翔(中国)が棄権したからです。


同競技は通常なら一日で一次予選と二次予選、翌日に準決勝と決勝を行うが、中国当局の指示で一日に一走のみとされています。

4日間、英雄の姿を世界中に見せつけるための暴挙でした。

しかし、当人がその暴挙によって潰れて、当局の思惑が外れてしまった。


一般の選手なら突然のアクシデントによる棄権は同情を誘うが、反日のスポークスマンとして活動していた劉翔ですから、「ざまあみろ」といったネットの書き込みが大勢を占めています。

ところが、母国中国でも「この脱走兵め」「意気地なし」「13億人を傷つけた。新記録だ」……、大手サイト掲示板に殺到する万単位の書き込みの多くが怒っている。

「逃げ劉」−−四川大地震で生徒を放って校舎から逃げた教師と同じ呼び方がすぐに広がった。


今回の北京五輪で中国のメダル獲得数は躍進しているが、その影には金メダル一個に110億円の巨費が投じられているとの指摘がある。

北京理工大学の胡星斗教授(経済学)は米政府系の自由アジア放送(RFA)に対し、多くの先進国では五輪の金メダルは全国民の健康増進の中から生まれるが、中国の場合は「完全密閉式の練習」によると指摘。

金メダルを目指す練習のため子供が数年から十何年も家に帰れないのは残酷だとして、自国の五輪挙国体制を批判している。

さらに胡教授は、中国はメダルを狙う選手養成に多くの資金を投じる一方で、国民の健康のための投資は少なく、これでは「金メダル大国」とは言えるが、真の「スポーツ強国」とは言えないと分析している。


中国には今も貧困のため小学校に通えない子供がいるにもかかわらず、金メダルのための「財政の巨大な負担と浪費」が国民の教育や健康増進の機会を奪う結果になっているという。

五輪憲章には、「オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある。」と書かれている。

五輪憲章にことごとく反する北京五輪が終盤に差し掛かっている。