・分不相応な工事の裏側

長野県立駒ヶ根病院の建設工事で発生した死亡事故は警察による現場検証が続いています。

警察からは何の発表もないようですが、信毎が精力的に関係者への取材を進めているので、新事実も明らかになってきています。

事故は起こるべくして起きたと考えられます。


クレーンの警報装置は、人為的に切られていた。

オペレーター個人の判断だけではなく、現場管理関係者も黙認していた。

警報装置を切らなければ工事に支障が出ると判断していたからです。


建設現場の規模に比較してクレーンが小さいのは、行きすぎたコスト削減の影響が大きい。

固定クレーンの安全性よりも、移動式クレーンの安さに飛びついた企業体質が反映されている。

いただいているコメントで、クレーンのオペレーターや現場監督といった実態を熟知した方々からも批判が寄せられている。




私も一時期、高層ビルの建設現場で現場監督をしていた時期がある。

鹿島が躯体を作り、当時私がいた会社が設備を担当していた。

もちろんチッポケな移動クレーンではなく、巨大なタワークレーンがはるか頭上で稼働していた。

現場の安全は、徹底的に管理されて死亡事故ゼロを目指して、末端の作業者に至るまで安全意識を浸透させていた。

鹿島のような一流の工事現場と三流以下の現場を比較することは無意味かもしれないが、人命に現場の違いで差が出ては困る。


別の工事現場(埼玉の高層ビル)では、私は設計担当だった。

設計上の問題が生じ、元請けのフジタと設計監理を請け負っていた日建設計と協議した時のこと。

設計図上では解決の目途が立たなかったが、「現場監督は○○さんだったよね。だったら現場で何とかできる。あの人なら任せて大丈夫だ」ということで、会議はまとまった。


建設責任者の総意で現場監督に一任して、設計図にない工事が行われる。

無責任な工事という意味ではなく、設計図段階では見えない所が、現場を知り尽くした監督のもとで描かれる施工図では可能になる。

工事の良しあしを左右するのは人である(すべてではないが)という実例です。

もちろん大規模プロジェクトでの話です。


地元の政治家が、自分の手柄として県から工事をもらって来たと噂されています。

再選に向けて積極的に選挙活動している一環として、支持母体への利益誘導の意味合いが強く感じられる。

その結果、分不相応な工事を与えたのだとしたら、政治家本人にも責任の一端が生じる。


議会が開催中ですから、発注した工事現場で生じた死亡事故の原因究明とともに、事業が発注されるまでの経緯を洗い出し、不正が介在する余地はなかったかどうかの検証が必要です。

工事能力がないのに受注した裏には何があったのか。(何もなかったらいいのですが)

単なるクレーン事故ではない、胡散臭いにおいがプンプンします。

政治スキャンダルをも恐れずに信毎には徹底的に調べ上げてもらいたいですね。

期待してるよ担当記者さん。