・竹食器が示す環境的コスト

嫌われ者返上ですわ 大阪の町工場、竹をエコ給食食器に


竹の食器が使われている光友小。「残さず食べました」=福岡県八女市立花町軽い、割れない、熱くならない。三拍子そろった給食用食器を、大阪市平野区の町工場が開発した。一見プラスチックのようだが、実は竹を原材料に使う「エコ食器」。学校給食用にと全国の自治体などから注目されている。繁殖力が強く「嫌われ者」の放置竹林を、無限の資源ととらえた発想から生み出された。

 午後0時半。福岡県八女(やめ)市立光友(みつとも)小学校の2年生のクラスで、給食係の男子児童が22人分の茶わんを1人で運んでいた。以前なら運ぶのは2人がかり。田中素直(すなお)君(8)は「前のは落としてよく割れたけど、今のは軽くて丈夫」。女子児童は「ご飯もくっつきにくくなった」。乳白色の食器が何でできているかを尋ねると、「竹!」と元気な声が返ってきた。

 昨年1月以降、八女市の8小中学校で約千人の児童・生徒らがこの食器を利用している。同市によると、以前の磁器製の茶わんの重さは200グラムだが、今は80グラム。熱も伝わりにくく、熱いものを入れても持ちやすい。また、製造から焼却までの二酸化炭素排出量は、プラスチック製より約70%少ないという。

 開発したのは大阪市平野区の岩本金属製作所。創業以来60年、アルミ製給食用食器を主に手がけてきたが、約15年前に岩本和倫(かずのり)社長(59)が竹の利用を思いついた。

 竹は繁殖力が強く、水平に根を広げて森林の生成を妨げる。すると土壌がやせ、保水力低下から土砂崩れを引き起こすおそれもある。放置竹林が全国で問題になっていることをシンポジウムで知った岩本社長は「竹はドラえもんのポケットから出てくるみたいに無限の資源」と考え、1996年ごろに開発を始めた。

 竹を粉末化し、最初は石油を加工した樹脂を混ぜた。より自然な素材を求め、トウモロコシを加工した樹脂を試した。混ぜ合わせる割合を変えたり、十分な強度が保てるよう工夫したりしているうちに8年ほどかかった。

 岩本社長は06年、福岡県の旧立花町八女市に合併)に「竹繊維を安定供給できませんか」と持ちかけた。同町は面積の15%にあたる約13平方キロを竹林が占め、うち3分の2が放置され荒れ放題になっていた。町は竹繊維の供給を承諾し、竹食器を学校現場でモニター使用することになった。立花町の食器はすぐ評判となり、今年4月からは東京都立の新設中学4校や福岡市の私立学校で導入されることが決まっている。

 岩本社長は「食育に生かしてもらえればうれしい」。課題はコスト面で若干割高なことだが、大量生産ができれば価格を下げることは可能という。いずれは歯ブラシや玩具にも使えるように「口に入れても安全な素材」とメーカーにアピールしたいという。

 元小学校教諭で給食育研究家の吉原ひろこさんは「給食用食器には持ち方や並べ方といった日本の食文化を学ぶ教材としての役割がある。竹食器は、二酸化炭素排出量も削減できるということを手のひらから考えさせることにも意義がある」と話している。 =朝日新聞

     ◇                    ◇

資源の有効活用による環境コストを算入すれば、見かけの価格の高さは支障でなくなることが多い。

環境税や炭素税が導入されれば、世の中の物品の価格が大きく変動するだろうし、それによって価値も変わる。

経済的な価値観を変えることが地球規模の環境問題を改善するうえでは非常に重要だと思う。