・福島原発事故 放射線の生活基準

福島原発から放射線が全国に飛散していることに東京を中心に不安が広がっている。

国の安全感覚に国民が疑念を抱いているからだ。

さらに混乱しているのは、屋内退避指示が出ている福島原発を中心とした20kmから30kmの地域だ。


屋内で退避しろということで支援物資はもとより、物流などの屋外作業に支障が出ている。

屋内退避地域に支援物資を届けたくないという運転手が出てくるのは心理的には理解できる。

しかし、支援物資が滞留することで生じる生命の危機を考えれば避難地域の指定を見直さなければならない。


この矛盾した事態を打開するのは政府の責任だ。

自治体も連携しなければならない。

福島県のHPにある屋内退避の項目には、『● 屋内に入り、外出しないでください。』と明記されている。

これでは、対象地域への搬入に物流業者が二の足を踏むことになる。


原子力安全技術センターでは屋内退避を下記のように定義している。

●屋内退避
原子力災害発生時に、一般公衆が放射線被ばく及び放射性物質の吸入を低減するため家屋内に退避することをいう。
屋内退避は、通常の生活行動に近いこと、その後の対応指示も含めて広報連絡が容易であるなどの利点があると同時に、建家の有する遮へい効果及び気密性などを考慮すれば防護対策上有効な方法である。特に予測線量が大きくない場合には、住民の動揺、混乱などをもたらすおそれの高い避難措置よりも優先して考えるべきものである。


原発の安全性を過信した原子力防災指針が実態に合わないのであれば、危機管理に即応するために柔軟な対応が求められる。

個人的には、各地の放射線のモニタリング(観測)数値をこまめに発表し、安全基準と照らし合わせてリスクのレベルを国民が判断できるようにしてもらいたい。

安全か危険カの二者択一ではなく、安全性と危険性の幅の中で、それぞれが置かれた状況が判断できる客観的な指標が欲しい。


放射線の安全基準では、放射線業務従事者は、5年間で100ミリシーベルト(年平均20ミリシーベルトに相当)かつ1年間の最大50ミリシーベルトとなっている。

12日午前、福島原発1号機では炉内の圧力が高まり、弁を開いて中の空気を抜いたが、作業は被ばくの恐れで順調にいかず、決死の覚悟で作業に当たった職員がようやく成功させた代償は106・3ミリシーベルトの被ばくだった。

この時点の安全基準の二倍の被ばく線量を受けた職員は、病院に救急搬送された。


15日、福島第1原発で作業にあたる人の被ばく線量の上限について、「100ミリシーベルト」から「250ミリシーベルト」に引き上げられた。

2.5倍に引き上げられたのだが、5年間の積算値あり、かつ一年間の最大はその半分であることが正確に報道されていない。

すなわち一年間には125ミリシーベルトが上限である。

12日に被曝した職員は基準値以下ということになるのだが・・・。


高濃度に汚染された福島原発の作業員は、被ばく線量が基準値に達したら現場を離れなければならない。

次に現場に入れるのは一年後だから、交代要員が必要になる。

福島原発の人員が発表されることがあるが、現在何人で、これまで延べ何人であるかが重要だ。


こうした現実を踏まえて、放射能汚染と安全の確保に対する確かな対応をとるための生活基準の公表が早急に求められていると思う。

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