・専門家の使命は市民の安全よりも原発を守る

東京電力福島第一原発事故で、最も恐れていたことの一つが現実になりました。

地下水の放射能汚染です。

トレンチに貯まった大量の水から、高濃度の放射線が観測されたときに、地下水に造詣のある人の多くが恐怖を感じたと思います。


さらに、プラントの現場に精通していれば、『トレンチ』という構造物がどれほど簡易に作られているかも知っているので、その時点で地下水が危ないことは関係者なら知っていて当然です。

拡散がある程度予測できる空中飛散と違って、地下水は水脈の多くが未知なので、どこにどれだけ被害が広がるのかまったく予想できません。

リスクがあまりにも大きいので、東電も情報を小出しにすることが精一杯の自衛手段だったと思います。


地下水は目に見えないし、通常の生活では接する機会も少ないので、存在を意識することはほとんどないと思います。

駒ヶ根市を例にとると、とうとうと流れる天竜川よりも大量の水脈が天竜川の東側に存在するのではないかと言われています。

目に見える流れよりも大きな水が地下で動いていることがあるといいます。


地下水は地上からの放射能汚染に強いと思われていましたが、水脈を介した拡散には手の打ちようがありません。

この期に及んでもテレビでは東京電力から多額の補助金をもらっている専門家が「飲んでも食べても大丈夫」「避難地域は広げなくてもいい」と楽観的なコメントを発し続けています。

今朝は東京工業大学の松本義久准教授が、「宇宙ステーションの放射線のレベルに比べればぜんぜん少ない」と『安全性』を強調していました。


事故が起きる前までは、原子力発電所が生活環境に与える影響は、「自然放射線による線量(年間世界平均2.4ミリシーベルト)よりもはるかに低い」が、安全性を訴える決まり文句でした。

それが、放射能汚染が深刻になってくるとCTスキャンに格上げされ、さらに危機的な状況に陥ると宇宙ステーションの被ばくを引き合いにしなければ安全性が説明できなくなってしまいました。

彼らは原子力発電の安全性を社会に訴えるのが使命なんだとつくづく実感させられます。


では、市民の安全を守るのは誰なのかというと、地方自治体や国でしょう。

原子力から受ける恩恵を優先して、市民の安全が軽んじられてきた過去を猛省する必要があります。

原子力の専門家が安全性を打ち出しても、住民を守るべき自治体は『想定外』の危険を前提に、最悪の事態に対処することを念頭に置くべきです。


原子力発電所の事故がもたらす甚大な社会的な被害に備えるには、巨額の基盤整備が不可欠になります。

発電電源として社会経済的に成り立たなくなるのは目に見えているので、エネルギー消費量の総量抑制が求められると同時に、次世代エネルギーと考えられていた技術の前倒しが急務です。


駒ヶ根市議会議員になろうと決意したのは、地方自治体の住民を守る意識が希薄だったのは議会に危機感が欠けていただと思うからです。

次世代エネルギーの普及に率先して取り組んできた経験を生かすときが来たという使命感があるからです。

震災に直面して多くの人が「自分には何ができるだろう?」と自問したと思います。


私にできることは、激変する社会に対応できるように市議会に働きかけることと、自治体に次世代エネルギーへの対応を促す役割だと思いました。

自分でなければできないことで貢献することが、自分にできる最善の行いだと思います。

市民は安全だが東大は危険?

事故直後、東大の中では文書が回り、「換気を止めること、ドラフト(化学実験などで使う空気が漏れない装置で、これを使うと外気が研究室に入る)」を停止するよう命令があった。

武田邦彦 (中部大学)  原発 緊急の緊急(42)  海の汚染より