・原子力という麻薬依存からの脱却

「責任を押しつける気か」同意書に怒り

 「責任を押しつける気か」。10日、福島県川内村警戒区域に一時帰宅する村民に、国側が「(住民らは)自己責任6 件で立ち入る」との同意書への署名を求めると、一斉に反発の声が上がった。

 村民を乗せたバスは午前8時50分、晴れ間がのぞく中、「中継基地」の村民体育センターに到着した。村民の手にはタオルや衣類などが詰め込まれたバッグや、家畜などの餌を入れた袋が。再会に涙を流して抱き合う女性もいた。「とにかく帰りたい」。出迎えた遠藤雄幸村長は1人1人に「元気で良かったね」などと声を掛けた。

 村民が感情を高ぶらせたのは説明会。国側が同意書への署名を求めると「国や東京電力は責任を取らない気か」「私たちは被害者なのに」などと怒りだし、国側は「十分注意してほしいとの趣旨だ」などと釈明に追われた。

 東電の担当者が防護服や線量計の使用方法の説明を始めると、村民の一人が「おまえは誰だ、名乗れ」と大声を上げ、担当者が「申し遅れました」と名前を告げた上で説明を続ける一幕も。

 千葉県流山市に避難している高山金作さん(82)は「持病の高血圧の薬を持ってきたい」。坂本ユキ子さん(68)は愛猫のペットフードの大きな袋を抱え「餌をやるためだけに帰る。いればいいけど…」と不安そうだった。

 滞在を2時間と決められたことへの不満も。箭内久吾さん(72)は「散らかしたままで出てきたから、半日ぐらいかけて片付けたかった。こっちの身にもなってほしい」と憤った。 =2011年5月10日 共同通信

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この記事を見た瞬間は、国に被災者を思いやる気持ちがけ欠けているなと思ったが、視点を変えると地元住民は自己責任で原発を誘致していなかったかと問われれば、明確に否と答えられるだろうかと思ったりもする。
浜岡原発の停止を受けて地元住民に複雑な反応が現れているとの報道があり、報道内容に偏向があることを考慮しても一部には原発の恩恵があって生活が成り立っているとの認識がある。
地元住民に限らず原発が不可欠だと思い込んでいる人は、麻薬患者と同類ではないか感じる。

原発補助金という麻薬に身も心も侵食されている。
麻薬とは脳内に作用し、酩酊・多幸感・幻覚などをもたらす薬物のうち、依存性や毒性が強く健康を害する恐れがあるものをいう。
原子力発電所とそれに付随する補助金交付金)は、電力供給に不可欠だとの脅迫観念を埋め込み、誘致すれば雇用が生まれ地元の経済が潤い、箱物がただで作れる、こんな幻想を抱かせていた。
毒性が強く健康を害する恐れが強いことは今まさに深刻化しつつある放射能汚染の実態を見ても明らかだ。

原発立地の住民でなくとも原発がなければ日本経済が立ち行かなくなるとの強迫観念に取り付かれた経済界の重鎮もいる。
原子力という麻薬の猛威は、世界中に蔓延してしまっている。
これに対して先頭に立って立ち向かうべきは、唯一の被爆国である日本であるべきではないだろうか。

原発依存症に罹患しているしている重症患者には、理屈を押し付けるだけではなく病人であることを前提とした治療が必要ではないだろうか。
禁断症状に苦しむかもしれないが、原発を絶ち、原発のない生活が当たり前であることを体感させることが必要だ。
菅直人薬害エイズの時といい、首相の器ではないものの、こうした分野に適性があるようだ。