・浜岡原発停止で電力不足は虚像

中部電力浜岡原発停止が決定しました。
日本の未来を見据えて、大きな一歩を踏み出した。
菅首相が始めて国民を利する政治決断をしたと評したい。

しかし、マスコミの論調はほとんどがネガティブなものばかりが目立つ。
直近の電力不足を懸念する記事が大きく取り上げられ、将来的な再生可能エネルギーへの転換見通しに関する国際的なニュースの扱いは実に小さい。
マスコミが担うべきは読者・視聴者の関心に媚びることなく、日本のあるべき姿をリードしていく主張ではないだろうか。

この意味において信濃毎日新聞の中馬清福主筆の論説は見事だ。
近視眼的な経済評価に陥ることなく、将来的な国家の繁栄に結びつける視点が読み取れる。
今騒いでいる小さな課題の本質は、騒がれていない大きな国家論の枠組みの中にある。

中部電力による夏の電力不足が危惧されるとマスコミ各社は大きく取り上げているが、ならば各社として国民に伝えるべき心構えを併記しているかといえば、抜け落ちてしまっている。
政府や電力会社のプレスリリースを垂れ流しするだけの安直な記事だからだ。
眼前に提示されたニュースソースに対して、横にしたりひっくり返したりしてその本質がどこにあり、解決の糸口はどこにあるのか、それを読者に示してこそ新聞やニュースとしての価値が生じる。

電力不足を例に挙げれば、放射線のリスクを過小評価して不当に原子力に依存してきたエネルギー政策の不備が招いたものであり、それを見逃してきた怠慢なジャーナリズムも責めを負うべきだ。
原子力は毎年4500億円程度の国の手厚い補助を受けて、「安い電力」に見せかけられてきた。
さらに、将来負担すべき管理費用が無視されて来たことで、原子力の電力が再生可能エネルギーに対して優位を保って来たに過ぎません。

原子力予算は、環境省の全予算の2倍の規模であることからも、日本の環境政策が歪だったことは明らかです。
マスコミ各社、記者の皆さんにお願いしたいのは、目立つ灯台に目を奪われるのではなく、その灯台の根元と、その基礎に隠れている本来国民に伝えるべきさまざまな課題を掘り下げて、積極的に伝える努力に励んでもらいたい。
電力危機は作り上げられた虚像であって、正しい知識を国民が持てば何も危惧する必要がない。

環境問題全般に共通する大きな課題です。
国民の無知に付け込む業界の悪知恵のスキームを暴き出して糾弾してください。