・県政運営の問題点


信濃毎日新聞の主催で行われた村井、田中両氏による対論から、対立点を見ていきます。


県政運営手法


田中氏の県政運営に問題点があるのは、誰もが感じていることです。
では、どこに問題があるのか?
私が田中氏と直接話をして感じたのは、理念の共有ができないと行動の歩調が咬みあわない人だということです。


田中氏が長野県の未来のために掲げた理念は、県民益に沿っていると思います。
脱ダム宣言を例に取ると、巨費を投じるダムを作り続けては、県の財政が破綻してしまう現実から、自然の摂理を利用して少ない投資で最大限の効果を狙ったもので、一定の評価ができます。
しかし、技術的に成熟していない『緑のダム』の効果が適切かどうかを判断するのは難しい。
さらには、これを使いこなすことの難しさは、巨大なダムを作り上げることを上回ると思います。


だからといって、既存の技術に安住できない現実に直面した時にどう判断するか。
田中氏は、あえて困難な選択に踏み切ったのだと思います。
山を活かし、森林を活かすことで保水力を高め、農地の保水効果、遊水池の整備など自然環境を豊かにする方向を選択しました。


ダムを作れば、局所的な防災・治水では効果が上がるかもしれません。
しかし、あまりにも大きな副作用に、地域の自然環境と県の財政が壊れてしまいます。


これら、自然に生きる人間としての理念に基づいた知事の指示が、県職員や県議会、関係自治体にどれだけ理解されたのか疑問に思います。
特に、万難を排してダムの建設を目指す、長野市長のようなタイプの人には、田中知事の理念が理解できているとは思えません。
ダムを作れば、巨万の富を得る土木業界も同様でしょう。


田中知事の失敗は、これらの理念が異なる人たちに、理解させることができなかったことにあります。
理解できない人が悪いのは当然ですが、目先の利益の捉われては、将来のビジョンが描けないことを丹念に説明し続けることが大事だと思います。
子を持つ親なら、子どもの視点で地域の将来を考えることもできるはずです。
子どもに借金付きのプレゼントを押し付けて、「ありがたく思え」とする傲慢さが、良い親のすることかどうかは、子育てを経験した方ならば誰でも判るはずです。


ただし、それでも理解できない、子を持つ親の視点になれない『バカ者』もいると思います。
できる限りの対話をしても自己中心的な考えを捨てきれない、利権を手放せない人とは、対立しても仕方がないと理解できます。


大事なのは、そこへ行き着くまでの経緯が、市民・県民に見えて、バカ者が誰かなのかを明らかにしていく過程です。
田中知事の県政運営に足りなかったのは、バカ者を諭して知恵をつける忍耐力と説得力です。


「知事があれだけやっても分からないようじゃ、ダムに固執するやつらはバカ者だ」
と、より多くの県民が理解できる状況を作ることができれば、県職員も動きやすいし、業界団体も方向転換に踏み切るでしょう。
これまでの、田中知事の手法は「説き伏せる」でしたが、これからは「理解を促す」やさしさが加わって欲しいと思います。


一方の村井氏は?