・矛盾だらけの村井氏の演説


飯田市で行われた合同演説会では、攻める田中氏とかわしきれない村井氏の印象が残りました。
村井氏も攻めるべき要素はいくらもあったのですが、詰めが甘くてダメージを与えられませんでした。
逆に、村井氏が受けたダメージの大きさが目立ちました。
・朝日新聞へのリンク 『個別政策の対決鮮明に 知事選』


三位一体の改革への対応について両候補に質問された場面では、
村井氏が何を思ったか、「私は三位一体の改革を決める立場にいた者です」と発言。
三位一体で地方税制が苦しくなる中で、どのように対処して行くのかを問われていたのに、
苦しめている国の側の責任者であると言ってしまったのですから、コーディネーターもフォローのしようがありません。


また、少子高齢化は最先端の日本の表れだとの持論を展開しました。
過疎地をはじめとする長野県が直面する少子高齢化問題への対応を問われてのことです。
過疎の村が最先端の地域だと言われても、ピンと来ないし、問題の解決も導き出せません。


極めつけは、借金を増やしても資産の形成を進めるべきとする主張が破綻してしまったことです。
他の自治体を引き合いに
「公債比率が20%になっては困るが、19.9%でいれば何の問題もない」
と、かなりきわどい持論を展開していました。


ところが、最後の演説で11の公約を言い連ねる中ごろに、
「県債残高の減少による安定的な財政運営を目指します」
と来たもんだ。


長野県が発表した資料によると、平成16年度が20.2%だが、平成21年度には16.1%にまで低下する見込みになっています。
現状のままでも長野県は起債の残高を減らせるが、村井氏は積極的に起債を積み増した財政運営を主張しているし、今回もそう言っていた。
ところが、公約では「県債を減少させる」としてしまったら、明らかに矛盾している。
村井氏が「県債残高の減少・・・」と言ったところで、会場内にざわめきが起こったほどです。


多くの聴衆が、村井氏の論理の破綻に気づいたのだが、当の本人は原稿を読むことに精一杯でまったく気がつかない。
公約の原稿が自分で書いたものでないことが明白になったとともに、
自分の発言の矛盾にも気がつかない頭の回転の悪さを露呈してしまいました。
これは致命的だったと思います。


1日の信濃毎日新聞を読めば、その深刻さが窺えます。
合同演説会の様子や村井氏の主張した内容には一切触れず、原稿を棒読みした「公約」の要旨を単独枠で掲載する優遇ぶりです。
一方では、議論が白熱したわけでもない高校再編について「論戦に熱」と題して、会場に来ていなかった県民には、さも高校再編で両候補が議論を戦わせたと勘違いさせる記事に紙面1/4を割いています。
双方の発言の概略を再現すると。

 村井「来年4月に実施されるというので県内各地で大変な問題になっている。なぜそこまで急ぐのか」

 田中「県では中学の卒業生は平成2年をピークに減少。私が知事就任する6年前の、さらに10年も前から問題があったが先送りされてきた。むしろ空白の10年間があったことを反省しなければならない」

 村井「再編があまりにも性急過ぎて、中学生や親が困惑している」

 田中「教育委員会は地域に入って地元の人々と議論して今回のプランを出してきている」

 村井「私が聞いている話とは違う。来春に実施すべきでない」

「性急ではないか」とただす村井氏に対し、田中氏は「選挙後に臨時議会で県議の皆様と協議させていただきます」と、かわす。
村井氏が最後の演説で「合意形成されない地域は白紙に戻す」と公約したところで、田中氏にはコメントの機会がなかったので論戦にはなりえません。


新聞記事は、眉にツバつけて読まなければならないことが、現場にいて実感できました。