・釜口水門の予備放流

7月豪雨災害で諏訪市に浸水・冠水被害が多発したことを受け、同市の環境市民団体「環境会議・諏訪」が諏訪市に対して、釜口水門の「予備放流」を可能にするため、同水門操作規則の改定を県や国に具申するよう要望した。
・長野日報 『釜口水門の「予備放流」要望 』


報道によれば、7月豪雨災害では、河川から諏訪湖への流入量が毎秒700トン以上を記録。
釜口水門から最大で毎秒414トンの放流を行ったが、諏訪湖の水位は特別警戒水位(2.1メートル)を超える2.33メートルまで上がり、市内各地に被害をもたらしたとされています。
同水門は、機能上は毎秒600トンの放流が可能とのことですが、流入量が毎秒100トン以上も上回ったことになります。


諏訪湖の概要を把握しておきましょう。

  • 湖面積13.3k㎡
  • 平均深度4.7m
  • 総貯水量62,987, 0 0 0 m 3
  • 滞留時間39日(琵琶湖2,000日、霞ヶ浦2 0 0 日)
  • 流入河川31河川(一級河川15・準用河川5・普通河川等11)
  • 流出河川1河川(天竜川)
  • 流域面積531.2 k㎡


今回注目したいのは、流域面積です。
釜口水門の放流量(毎秒600トン)を流域面積で割ると、放流できる雨量が計算できます。
時間雨量にして約4mmに相当します。


この雨量を僅かと感じるか、多いと感じるか。
流域の保水力が極端に低いと仮定すると(都心のようにアスファルトで覆われている状況)、小雨程度の雨量でも諏訪湖の水位上昇が防げなくなります。
逆に考えれば、諏訪湖周辺の冠水を防ぐためには、流域の保水力を高める他には考えられません。


琵琶湖や霞ヶ浦に比べて滞留時間が短いことは、流入量に比べて貯水量が少ないことを現しています。
今回の要望では、豪雨が予想される状況では、予備放流をして諏訪湖の水位を下げ、災害に備えることに主題が置かれています。
しかし、貯水能力に劣る諏訪湖では、水門の機能に頼って水害を防止するには限界がありそうです。


釜口水門は、今回の流入量毎秒700トンに対して基準放流量が400トンで、その差は300トンもあります。
この状況が24時間続いた場合は、諏訪湖の水位は2mも上昇してしまいます。
予備放流をしてあったとしても、諏訪湖周辺の冠水被害を無くすには不足していると思います。


諏訪湖と釜口水門の機能を考えれば、これはダムに相当します。
ダムに頼ることなく山の保水力を高める「緑のダム」に加えて、流域における雨水貯留機能の向上が不可欠ではないでしょうか。
ダムへの過大な期待が、必要な施策に目を向ける機会を失わせてしまう危険性があります。


緑のダムの論理的な裏づけについて知りたい方は、↓を参照すると良いですよ。
・代替案 『緑のダム問題 』