・風力発電の引き換えは

伊那市内の入笠山・鹿嶺高原一帯に計画されている風力発電計画が動き出しました。
28日には、伊那市議会総務委員会では定例会の開催を前に、賛成・反対両派から意見を聞きました。


これに先立ち、事業を計画している丸紅と三峰川電力からも、概要説明を聞いています。
・伊那毎日新聞 『全協で風力発電事業計画を説明』
お隣の伊那市の計画ではありますが、伊那谷で供給できる貴重な自前電力ですから、
周辺自治体の市民としても大きな関心を寄せています。


風力発電事業については、計画の当初からこのブログで追ってきましたが、
建設的な議論は、これからといった状況です。
現状では、一部の受益者や代弁者が、各々の権利を主張しているに過ぎません。
特に、反対派の団体は、風力発電が負う重要な使命を直視することなく、
反対のための運動に終始しています。


改めて言うまでもなく、地球温暖化が進んでいる今日では、エネルギー問題を避けて通ることはできません。
自給能力を超えてエネルギーを消費しているのですから、
何かを犠牲にしなければ成り立たない環境で生活していることを自覚する必要があります。


何が何でも新エネルギーの導入を進めなければならない、との立場ではありませんが、
導入を前提としてエネルギー問題を考えることが必然的な状況であることは異論の余地がないでしょう。
そこで、反対の理由を検証してみましょう。

  • 景観を損なう恐れ
    • 主観的な要素ですから、考え方次第といえると思います。人工物が世界遺産として登録されていることを考えても、自然エネルギーを生み出す景観として、風力発電が遠方に整然と並んでいる様子は、新たな景観として意義があると思います。
    • よって、反対の絶対的要素とはならない。
  • 工事・管理用道路や風車の基礎工事が自然破壊や災害につながる可能性
    • 森林利用には一定の林道の確保が必要になるので、工事用道路の二次利用の価値も考える必要がある。さらに、基礎工事はすでに中部電力の鉄塔を建設する際に許容されている点も考慮されるべき。
    • よって、新たな障害とは考えられない。
  • 山岳地帯への建設は国内初で、技術的懸念がある。
    • 純粋に技術的な観点から検討されるべき問題であり、事業者の計画を検証する必要があるが、すでに巨大な鉄塔が建っていることからして懸念するほどのことであろうか。
  • 猛禽類などの鳥類が風車に衝突する恐れ
    • 生活道路で狐や狸が車に衝突するのと、どの程度違うのだろうか。
    • 絶滅危惧種の生存に致命的な影響が出るとすればコースの設定に配慮する必要がある。
  • 風量しだいで出力が変動する不安定さ
    • 風力発電の特性であり、今回の事業に特化したことではないので反対理由にならない。

賛成の理由までやると大変なので省きますが、本質的なところで事業を阻害するだけの要因とはなり得ない。


現状では、最も大事な、地域エネルギー供給ビジョンが示されていないので、
風力発電の置かれているポジションが不明確な状態です。
静岡の浜岡原発から電気の供給を受けている市民としての自覚がまったくない。
原発停止の余波で火力発電所が再稼動して、CO2が一気に増加していることなどお構い無しに写ってしまう。


伊那市は、地域新エネルギービジョンの策定すらされていない状態です。
唯一、同ビジョンを策定している旧長谷村のレベルに他の地域が達していないと思われます。
今のままでは、家計の苦しさも知らずに、新しく買うおもちゃ選びで兄弟げんかをしている子どもと同じです。
大人の論議が待たれます。