・ゴミ処理施設の難しさ

上伊那広域連合で計画している「新ごみ焼却施設」は、建設地の選定で難航しています。
ダイオキシンの発生源として、居住地から遠ざけたい住民感情が働きますから、
人里はなれた山奥にでももっていかない限り、必ず反対の声が出てきます。


しかし、迷惑施設ではあるが、地域住民の生活を支える社会基盤としてはなくてはならない。
何でも反対では済まされない、ゴミの排出者としての義務を考える必要があります。
ゴミを出す市民として、焼却施設の利用者としてこの問題を考えてみたいと思います。


上伊那の燃やせるゴミは、クリーンセンター辰野と伊那中央清掃センターの2箇所で処理しています。
しかし、両施設とも老朽化が進んでおり、耐用年数が迫っています。
そこで、上伊那の焼却施設を一本化して、新設することが決まっています。
この総論には、反対はほとんどないと思います。


問題となるのは、設置場所と施設の構造ですが、今回は設置場所に限って検証します。
現状で設置手順は、上伊那広域連合が出している「新ゴミ中間処理施設建設用地の選定について」が基本です。
骨子は『候補地受け入れ表明があった場合は、別途定める用地条件に合致しているか否かの判断は行わない』
とするものです。
言い換えれば、立候補してきた地域があれば、無条件で建設予定地として認めるとされています。


かなり乱暴な気もしますが、用地選定の困難さを考えれば、そこまで追い込まれているとの見方もできます。
しかし、無条件というのは行き過ぎでしょう。
条件の中には、「必須条件」と「付加条件」があるのですが、必須とされたものまで黙殺するのはいかがなものか。


特に「周辺の土地利用状況」の項目は、無視することは許されません。

    • 付近に人家の密集地がないこと
    • 付近に上水道の水源地もしくは上水道用水として取水している河川がないこと
    • 自然度が比較的高くなく、希少種の生存の可能性が低いこと

ごみ焼却炉が環境に負荷を与えるというか、汚染する施設だということを前提とした条件設定です。


また、受け入れるとした地域の認定にも問題が発生する要因が隠されています。

    1. 受け入れてもよいとする候補地が属する地域(主として区)住民の大多数が受入に合意した場合であって、総会等で決議がなされ、候補地としての受入を広域連合長に申し入れていること。
    2. 受入してもよいとする候補地の大多数の地権者が、用地提供について基本的に合意していること。


仮に、話題となっている伊那市下川手が候補地だと想定して考えてみると。

  • 周辺の土地利用の必須条件
    • 美篶団地が隣接しているので、人家の密集地として条件は最悪です。
  • 候補地が属する地域住民の合意
    • 建設候補地は下川手地区の所有地でありますが、下川手の集落は1km以上離れていますから、建設地域の同意とは言い切れない。
    • むしろ、この場所のような飛び地の場合は、直近に居住する美篶団地を含む美原区の合意を優先する必要がある。


現存する伊那中央清掃センターの隣接地に新たに建設すると仮定した場合、
現状の選定用件では、実情に合っていません。
地権者の合意としては、下川手地区の決議が優先されるとしても、
地域住民の合意としては、直近の美篶団地の合意が優先されると考えた方が合理的です。


上記の想定にもとづけば、

  1. 地権者の合意を取り付ける
  2. 美原区と下川手区で同時期に地区説明会を行う
  3. 住民が理解を深める機会として地区懇談会を必要に応じて開催する。
  4. 一定の理解が示された段階で、両地区により受入の賛否を問うための地区総会を開く
  5. 両地区ともに合意が大多数となったときに受入候補地として認定される

このような段階を踏む必要があると考えられます。
さらに、隣接する前原区を含む近隣の地区の意向も重要ですから、協議の場を提供しなければなりません。


窓口となっている上伊那広域連合は、住民との接点を持たない不思議な行政機構なので、
特に慎重な対応が求められます。
しかし、上伊那広域連合が公式に発表している「今後の進め方」によると市議会の存在が優先するとされています。

伊那市長は、候補地を決定した場合は伊那市議会に報告し、その後正副連合長会に諮ります。

伊那市議会が、市民の立場で誠意ある合意形成がなされているかどうかチェックできる位置にあります。
合意形成をスムーズに進めるためには、伊那市議会が率先して手順のあるべき形を作っていく必要があるでしょう。


伊那市内で選定すると決められている以上、上伊那広域連合の一員である駒ヶ根市民としては見守るしかありません。
しかし、非民主的な進め方がされようとするならば、伊那市民と一緒になって行動する義務もあります。


このブログは、伊那市の職員も多数が参照してくれていますから、この記事を見たあなた(伊那市職員さん)、
市議会と連動して市民が納得できる合意形成に向けて尽力してくださいよ。