・行き場のない出産難民はどこへ

飯田市立病院長野県南部の医療崩壊は急速に進行しています。

産科がなくなり、整形外科がなくなって、総合病院としての機能を果たせなくなってしまった昭和伊南総合病院(駒ヶ根市)は、その典型です。

上伊那では1700件近くの出産がありますが、そのうちの500件を受け入れていた昭和伊南の産科がなくなることで、その余波は連携強化病院の伊那中央病院に押し寄せます。


さらに、上伊那で受け入れきれない「出産難民」は、下伊那に回されることになっていますが、これまで順調に運営されていると思われていた飯田市立病院も危機に立たされているといわれています。

ここでも産科の医師が半減する可能性が高まり、出産受入数を現状の1/3にすると見られているからです。

伊那谷全域で出産難民の出現が現実問題としてより深刻化してきました。


上伊那地域では、里帰り出産を禁止して出産件数を減らそうと算段していますが、産科医師の減少は全国的な広がりを見せているので、よそへ押し付けて数字上のつじつまが合うと考えるのは虫が良すぎます。

助産院と個人開業医で受け入れられる150件程度を除いた1500件余が伊那中央病院に押し寄せる事態が起きると思われます。


伊那中央の院長は「先着順で受入を越えたものは断る」と市民に向けた勉強会で述べていますので、受け入れられるとされる1200件を除いた300件のお産は、行き場を失います。

現状では、受入を超えてしまっても、新たな受け入れ先を見つけてくれる広域連携が確立されていません。

上伊那の市町村長は、地域住民の生存の根源である「お産」を守るために、万難を排して臨む姿勢が求められています。


医師のプライドや「白い巨塔」の壁を突き破って、危機を打開するための早急な取り組みには、市民の知恵を借りるしか打開する方策はないでしょう。

行政も慣例やプライドを捨てて、地域の人材に問題解決の助けを求める姿勢に転換する必要がある緊急事態です。