・出産危機は長野県全域に

長野県の上田市周辺のいわゆる上小地域では、産科医が一気に減る可能性が出て、混乱に陥っています。

同地域で、比較的リスクの高い分娩も扱う国立病院機構長野病院産婦人科の常勤医師4人全員が、来年7月いっぱいで派遣元の大学に引き揚げられ、出産、診療、健診など産婦人科の機能がすべて休止に追い込まれる可能性のあることが7日わかったからです。


上田市産院でも院長が退職して医師が3人から2人になった場合、補充ができなければ、年間約700人のお産数を500人程度に縮小することが検討されています。

最悪のケースだと年間で700人程度が出産難民となる可能性があります。


駒ヶ根市周辺の上伊那地方でも、同様に数百人規模の出産難民が出ることが予想され、受け入れられなかった出産は他の地域へ振り分けられる見込みです。

しかし、他の地域でも同様の事象が生じている現状からすると、行き場のない本当の出産難民が出る可能性が大きくなっています。


一方、常勤産科医のいなくなった病院で分娩(ぶんべん)を扱う助産師たちの話が伝えられています。

京都府舞鶴市にある国立病院機構舞鶴医療センター内の「院内助産所」です。


産科医がいなくなった舞鶴医療センター助産師10人は「これまでは医師の指示通りにしてきたが、医師がいなくなって、はじめて自分たちの役割を考えた」と口をそろえる。

「私たちに何ができるだろうと方法を探したけれど、ただ、生まれる力を信じて妊婦に寄り添えばいいと分かった。それなら、できるんじゃないかと思えた」とも話しています。


助産所の開設には、産科の嘱託医が必要だが、センターで外来を担当する産科の非常勤医が嘱託医をになう。緊急事態への対応も課題だったが、車で5分くらいの舞鶴共済病院との連携が決まった。

いわば、残された受け皿を最大限に活用した形だ。

助産師10人が医療センターに勤務していた経験も「ハイリスクの怖さを知っているから母体をシビアに見られる」と、今となっては強みだ。


厚生労働省の研究班が平成15〜17年度に行った研究報告は、現状のまま分娩施設の集約化が進むと、核になる病院での産科医の労働条件はさらに過酷になると指摘。

緩和策の一つとして、助産師のマンパワー活用が提案されている。

出産の主力を医師に頼った現状を根本的に見直し、主役を助産師とし、医師は困難な出産を請け負うなどのサポート役として労力の軽減をはかる時期に来ているのではないでしょうか。