・不都合な真実(試算)を公表せず

試算を担当した地球環境産業技術研究機構温室効果ガスの排出削減に関する日本政府の中期目標検討委員会が、不都合な真実を隠蔽していることが明らかになりました。

自民党政府による情報隠蔽は珍しくありませんが、今回の隠蔽は国際的な批判を招くので悪質です。


今月27日に検討委では、「日本の数値が小さくても、他の先進国が日本と同じレベルの努力をすることで、先進国全体では比較的大きな削減が可能になる」との日本にとって都合のいい結果だけを公表している。

しかし実態は、「日本の削減率が小さいと、先進国全体の大幅削減にはつながらない」との試算結果が提出されていた。

「日本の省エネは進んでいるので少ない削減で十分だ」との一部の産業界の主張に沿う形となっている。


報道によると、政府内には都合の良い試算だけでなく不都合な試算の公表も考慮されたものの、経済産業省が難色を示し隠蔽することになったようだ。

すでに公表された試算は、日本が4%増でも先進国全体では、10−18%の削減が可能で、日本が「0−3%減」なら全体では25%減が可能というものだった。

だが、この試算を担当した地球環境産業技術研究機構では、削減率の算出に二つの手法を使っており、隠蔽された手法では「日本が3%増だと先進国全体で5%減にとどまることが示されていた。


隠蔽された手法による試算では、公表された手法による削減に対して4〜19ポイントも小さくなり、先進国全体で大幅な削減を実現するためには日本もより踏み込んだ削減努力が必要なことが示されている。

不都合な真実は、いつの時でも権力者によって隠されるのである。


これに呼応して産業界は、国民に対して削減に消極的になるように呼びかけを行った。

2020年までに達成すべき温室効果ガスの削減目標をめぐる議論が続く中、日本経団連日本商工会議所などが連名で新聞各紙に「(90年比)3%削減でも1世帯あたり約105万円の負担」とする意見広告を掲載したのに対し、斉藤環境相は19日の閣議後の記者会見で「大変悲しい。産業界の本気度が疑われる」と批判した。
 意見広告は、朝日新聞を含めた17日の朝刊に掲載。「考えてみませんか? 私たちみんなの負担額」と呼びかけ、「日本は世界トップレベルの低炭素社会」「裏付けのない過大な削減には国民全体に大変な痛みが伴う」などと主張した。
 斉藤環境相は「国民の負担と書かれているが、省エネによるエネルギーコストの削減や何もしなかった時の対応コストも併せて考えなければ、国民に誤った認識を与える」と述べた。 =2009年3月19日 朝日新聞
時の権力者や社会的強者に都合の良い情報で世論を形成しようとするたくらみは、政権交代を阻止しようとする動きだけではないようです。