・1号機、津波前に重要設備損傷か

原子炉建屋で高線量蒸気

 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。

 1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。

 地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がっているが、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。

 関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。

 この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。

 さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった。 =2011/05/15 共同通信

           ◇                    ◇

原発の圧力容器や建屋は十分な耐震強度が確保されているといわれていたが、根底から覆されることになりそうだ。
そもそも、箱物が耐震であってもプラント全体としての機能が保全されるという保証がない。
このあたりが建築屋とプラント屋の違いであって、一般の人でも分かりやすくするなら震災の避難所は建物がしっかりしていても電気や水道は止まるでしょ、ということ。

原発のプラントは水配管が縦横無尽に張り巡らされているので、地震の揺れに耐えられない。
原子炉に損傷がなくても接続されている配管が断裂すれば、結局は原子炉に穴が開いたのと同じことになる。
国や電力会社は建前で話をするので、壊れにくいところばかりをさして「安全だ」というけれど、壊れやすいところの存在はできる限り隠す。

国民には隠せても地震では揺れてしまうから、壊れることから逃れることができない。
福島第一原発では、想定外の津波の被害が犯人扱いされているが、現実には地震で壊れたのだ。
これまでの東電なら隠蔽に成功したかもしれないが、弱体化した組織を守りきれないと判断した内通者の存在がそれを許さないだろう。

プラントとしての脆弱性は全世界の原発に共通する。
地震が発生して壊れて欲しくない配管に損傷が起きれば、福島と同じかさらに悪条件に陥る可能性はどこの原発にも当てはまる。
耐震強度をいかに高めても必ずどこかが壊れる。
重大事故になるかならないかを運にまかせられるほど原発のリスクは小さくない。

福島第一原発の検証が進むにしたがって、原発の安全性は低下していくに違いない。
原発が存続できる安全性の確保は徐々に困難であると認知されていくだろうから、脱原発の用意はすぐにでも始めなければならない。
日本のエネルギー構造を白紙から見直すことから始めるのが政府に課せられた緊急の課題だ。
国会を休会にして一休みしている余裕はない。