・飲酒運転撲滅と公共交通

全国で飲酒運転事故が相次ぐ中、秋の全国交通安全運動が21日、始まった。
夕暮れ時の歩行者や自転車の事故防止、シートベルトとチャイルドシートの着用を
重点目標とするほか「飲酒運転の根絶」を運動の基本にしている。


期間は21日から30日までの10日間。
長野県下諏訪町では警察官らが管内の飲食店50店を訪問、チラシを配り、飲酒運転防止を呼び掛ける。


政府の交通対策本部が15日、関係各省庁に飲酒運転対策の検討を指示、
警察庁は従来の「高齢者の交通事故防止」に加え、飲酒運転の根絶を運動の基本に追加した。


宮城県では、特筆すべき条例の制定に向けて動き出しています。
飲酒運転撲滅条例を制定へ=黙認行為も処罰対象に−宮城県議会 記事引用→*1
酒類の提供や同乗など、飲酒運転を黙認する行為を処罰の対象としている点が評価されます。


身内や知り合いが飲酒運転をしようとしていても、人間関係を重視するあまりに、
黙認せざるを得ない状況があります。
極端な例だと、結婚式の帰りで幸せ気分に浸っている酔っ払い。
正反対に、葬儀の帰りで悲しみに打ちひしがれている酔っ払い。
どちらの場合も、強引に飲酒運転を引き止めるには、遠慮してしまう状況が考えられます。


こんな場合でも、飲酒運転を黙認した者が処罰されることになれば、
周囲のものも犯罪者になりたくないので、積極的に飲酒運転を阻止するようになります。
遠慮が介在する余地を無くす効果が期待できる。


飲酒運転の本人以外の処罰は、罰則で飲酒運転を抑止する行動に強制力を持たせるというよりも、
飲酒運転を防止する行為に積極性を出させる効果のほうが大きいと思います。
止めさせたくても止めさせられない状況にあっても、
「止めさせないと私が捕まっちゃうんだから、絶対に飲酒運転はさせないからね」
と、強く言うことができるようになる。


ところが、処罰だけでは解決できない問題も残されています。
公共交通機関が貧弱な地方都市や田舎では、自家用車が唯一の移動手段の場合もある。
飲酒運転の処罰も怖いが、酒の誘惑には勝てない御仁には、非常に酷な環境です。


飲んでも安心して帰れる状況にあれば、危険を冒してまで飲酒運転をしないでしょう。
飲酒運転の根絶には、やってはいけない意識の浸透と共に、
飲酒運転の必要性がなくなるような公共交通の整備が不可欠です。


路線バスやローカル鉄道は、独立した採算性から衰退の一途を辿ってきました。
しかし、地球温暖化防止に寄与する交通手段としての役割に期待が高まって来たことを追い風に、
一定のコストは社会が負担するとの意識が芽生えてきています。


自動車産業の圧力というか、まさにアメリカ合衆国の圧力によって、
路線バスより自家用車の普及が促進されてきたことは否めません。
鉄道輸送がトラック輸送に切り替わった一つの要因ともなっています。


地球温暖化防止と飲酒運転撲滅という、社会的な最優先課題の解決手段として、
再び公共交通機関の必要性を考え直し、特に地方都市、田舎におけるコスト負担を、
社会的コストとして、全国民が広く支えていく意識が必要なのではないでしょうか。


公共サービスの社会的価値を無視してまで、「民間にできることは民間で」として、
弱者を切り捨ててきた小泉路線の弊害がこんなところにも現われています。

*1:全国で相次ぐ飲酒運転事故を受け、宮城県議会は21日、運転手の周囲の者の飲酒運転防止義務、罰則などを盛り込んだ「飲酒運転撲滅条例」を制定する方針を固めた。来年の2月定例議会に議員提案し、同10月の施行を目指す。年内に策定する条例案では、酒類の提供や同乗など、飲酒運転を黙認する行為を処罰の対象とし、飲食店や駐車場など関係業者の飲酒運転防止義務も明記する見通しだ。