・農水産物の暫定基準値は維持 政府、解除ルール策定へ

 厚生労働省は4日、薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会を開き、農水産物放射性物質に関する食品衛生法の暫定基準値について「維持すべきだ」との意見を取りまとめた。同省は審議会の意見を踏まえ、現状の暫定基準値を確定。政府の原子力災害対策本部は出荷停止や摂取制限の解除ルールを策定する。

 取りまとめでは、有識者でつくる内閣府食品安全委員会が現基準の維持が適当との評価をまとめたほか、原子力安全委員会も同様の見解を示していることを指摘。

 放射性物質の飛散が収束していないことなどを踏まえ、暫定基準値を維持するべきだとした。

 また同省などに対し、国民の不安感を払拭(ふっしょく)するため、放射性物質の健康影響について分かりやすく情報提供するよう求めた。

 暫定基準値は、福島第1原発の事故を受けて厚労省が急きょ設定した。一部の農産物が出荷停止となっている県からは、基準緩和や早期解除を求める声が強い。

 政府は解除ルールに加え、県単位で実施している規制を地区単位に細分化することなどを検討している。 =2011/04/04 【共同通信】=

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当然ですが、安全基準が改悪されずにすみました。

農家の保護も大事ですが、そのために国民の生命を守る基準を安易に動かすことはあってはならないでしょう。

見直そうとしたこと事態が異常だと思います。


見直すべきは基準の運用方法です。

放射線予測システム SPEEDI(スピーディ)による高濃度汚染地域の特定と、これを基にしたモニタリング体制をしっかりと機能させ、危険度の高い場所と比較的低い場所の特定が必要です。

危険と安全でばっさりと切り分けると中間的な地域では影響が大きくなるので、危険度を国民が理解できるように丁寧に説明することが望まれます。


「ただちに健康に影響がない」などというお役所言葉を止めて、「寿命をどれほど短くします」とリアルに届ける工夫が欲しい。

例えば環境リスク学の評価なら、喫煙による全死因では数年から数十年という期間の余命が失われると報告されています。

寿命が何年か短くなってもタバコが吸いたいと思う人は、割り切って吸えばいいということになりますが、医療費は国全体の負担にかかってきますから個人のリスクとして割り切れません。


空から降ってくる放射性物質によって損失余命が何日だとか、何年だとか予測できるようになると、他の生活環境リスクと比較して自分にとって危険なのかどうか判断がつけやすくなります。

アメリカの論文ですが、1979年に「「リスク・カタログ」が発表されています。

これによると自然放射能による損失余命は9日です。

違法薬物の使用が18日、飲酒が130日、左利きが3285日など、多角的にリスク評価されています。


日本ではリスク評価が正しく認識されていないので、潜在的な恐怖感が安全基準をゆがめているといわれます。

しかし、科学者の理論ではリスクが低くても、人心に与える社会的影響を加味すると損失余命だけで割り切れないこともあるので、あくまでも判断材の一つとして提示してもらいたいと思います。

仮に、摂取制限になった野菜を一年食べ続けた場合の損失余命が10日だとすると、一日食べたくらいでは40分の寿命短縮に相当することになります。

タバコを一箱吸った人の損失余命が110分なので、体に悪いことをしているんだなと感覚的に捉えられます。

※感覚的に捉えるための仮定ですから、誤解しないように。


ちなみにアメリカ人でコーヒーを飲む人の損失余命は6日だそうです。

日常生活の中に環境リスクは散在して一つ一つ意識していませんが、神経質になると生きていくのが難しくなりますね。

環境リスクの指標を精神的にも安心できるように改良してくれると、無用な風評被害が防げるようになるのではないでしょうか。