・バイオマスだけじゃ足りない

駒ヶ根市でまとめた「地域新エネルギービジョン」によると、
市内全域に賦存する森林バイオマスエネルギーは1940万ギガジュール。
市内で一年間に消費するエネルギーは360万ギガジュール。
5年とちょっとのエネルギー供給が可能です。


森林の再生速度からすると、5年ほどで使い切ってしまっては循環型エネルギーとして成り立ちません。
森林が面積の70%を占める駒ヶ根市でさえ、この程度です。


では、農産、家畜や人の糞尿、可燃生ゴミまですべてひっくるめたバイオマス資源としてみたら。
それでも5年とちょっと+αのエネルギー供給能力しかありません。
森林以外のバイオマスエネルギー量は12万ギガジュール程度しかないからです。


この計算の元になっているのは「賦存量」です。
資源をすべてエネルギーに変換できたと仮定した場合の理想値ですから、非現実の世界です。
効率を無視した計算であります。


では、効率を加味したらどうなるのか。
最大可採エネルギーは約740万ギガジュールとなって、約二年分に下がります。
賦存量と最大可採量の違いは、エネルギー変換ロスを見込んだ分が減っています。
経済性や生産性をまったく無視して、現代の科学技術で可能な限り利用した場合と考えてください。


バイオマスエネルギーでは、可能な限りを尽くしても2年分を賄うことしかできないのが現実です。
仮に森林の再生に必要な成長期間を30年とした場合、現状の15分の一にエネルギー消費量を低減しないと
資源循環が成り立ちません。
周囲を森林に囲まれた駒ヶ根市においてさえこれですから、
現状のエネルギー消費量があまりに多すぎることが分かると思います。


バイオマスエネルギーのよいところは、比較的簡単に資源からエネルギーが取り出せることです。
太陽光発電のように変換機器の製造に多大なエネルギー消費を伴わないので、エネルギー生産効率も高いと考えられます。
しかし、身近な資源の有効利用の視点からバイオマスに関心が高まるのは良いことですが、
バイオマス資源が、化石燃料によって支えられた現代社会の新たな担い手になれると思ったら大間違いです。


太陽光や地熱、風力など、バイオマス以外にもエネルギー源はありますが、
これらも人間の利用のためにあるわけではありません。
もちろんバイオマスだって、全部を人間が利用してよいわけがない。
ところが、利用してよいわけではない資源を全部使っても、賄いきれないほどの生活をしているのも人間です。


とにかく人間はエネルギーを使いすぎているのです。
新エネルギーが化石燃料の代替になると期待するのではなく、
身近なエネルギーで生活ができるように社会構造を変えていかなければならないのが本筋です。


人間に求められているのは、地球温暖化防止よりもさらに進んだ「減エネルギー」です。
省エネルギーなんてのは、人間のエゴの現われ、そのものだと思いますよ。
我が家の今年の実績「CO2の50%off」なんてのは、焼け石に水程度であって、とても満足できるものではありません。


普通に社会生活を営みながら、どこまで減エネルギーできるのか。
日々頭を悩ませながら、しかし、楽しんで、更なる減エネルギーに取り組んでいきます。
すべては、子どもの将来のため、子孫を困らせないための、今を生きる世代としての責務だと思いますから。