・惜しまれる伊那毎日新聞の廃刊


伊那毎日新聞(以下、伊那毎)の廃刊が伝えられました。

ものすご〜く残念です。


地元に密着した話題を取り上げつつも、社会派の視点から厳しい行政批判も辞さない報道姿勢を高く評価していました。

うちのブログも多大な恩恵を受けています。

特に、同紙がネットで報道写真を公開してくれたおかげで、ブログの臨場感を高められたことに大変感謝しています。


今年一月の市長選挙で落選した「前市長の後継候補」が、駒ヶ根市職員労働組合と交わした『不正な密約』を正面から報道したのも同紙です。

他紙(朝日、読売、信濃毎日、中日など)は選挙期間中ということで二の足を踏んだが、伊那毎は候補の実名報道までは至らなかったものの、市職員と市長候補者が選挙応援と引き換えに利益供与の取り決めを交わしたことを市民に伝えてくれました。

伊那毎日新聞 「市民が公正な開票を申し入れ」

この報道がなかったら、不正の中身が市民に伝わらずに、不正を行った中原後継候補が当選していたかもしれません。

市長選挙の影の功労者だと、最上級の評価を差し上げたいと思います。


当たり障りのない記事となってしまった他紙との違いは、『義憤』でした。

選挙違反として捜査の手が入るかどうか見極めが難しいからと報道を控えた大手紙の記者に比べて、警察の判断にかかわらず「今そこにある不正」を明らかにする報道機関としての使命を忠実に遂行した伊那毎の記者は頼りになりました。

反面、市民が本当に知らなければならないことでも、新聞社や記者の体面を測って報道しなかった他紙の報道姿勢にはがっかりしました。


信毎は田中前知事には、重箱の隅をつついて、ありもしない不正を作り上げるほど過度の報道姿勢を示しましたが、田中氏が退任した後は元の「穏便な報道」に逆戻りしてしまった。

報道機関の飯の種である情報ルートが断たれることを恐れて、どちらに転ぶか判らない不正はお蔵入りすることが多いと思います。

ましてや、先日の県議会議員自殺のように、不正の根拠を報道したことで当事者を死に追いやったと批判されれば、さらに臆病な報道姿勢になる危険性があります。


しかし、報道の使命は真実を市民に伝えることにあるはずです。

将来のネタの確保を重視して、真実を明らかにすることをためらうのは不正を増長させることにつながります。

こと信毎は、田中前知事にはできて、村井知事や他の市町村長にはできないという矛盾がはなはだしい。

遺恨が報道のエネルギーになってしまっていたことの現われですから、これはこれで報道機関としては信頼に欠ける側面を持ち合わせています。


ついSM紙批判の流れになってしまいましたが、話題を元に戻して。


24日の同新聞社の会見によると、06年度までの3年間は黒字だったが、07年度は数百万円の赤字。黒字に戻すことは難しいという。

「赤字を背負いながら新聞発行を続けることはあり得ないし、株主に失礼」とも伝えられています。

報道機関としての使命よりも、株式会社として株主への配慮が優先した廃刊の理由は、同紙の最後に汚点を残してしまった。


記者や編集部にはあった報道機関としての義憤が、経営者に欠落してしまったことが残念でなりません。

伊那毎の記者の皆さんには、「これまでご苦労様でした。これからも記者として地元で活躍できることを期待しています」とお伝えします。


伊那毎日新聞の記者ならびに編集部の皆さん。

これまで大変にお世話になった恩返しに、力不足は承知の上ですが、伊那毎日新聞の報道姿勢の一角でも引き継いでいきたいと思います。

伊那毎日新聞社は解散しても、皆さんとのつながりは大切にしていきたいと思います。

ありがとうございました。 & 今後もよろしくお願いします。