・リニア新幹線と電気と政治家

リニア新幹線に国からのお墨付きがついて、着工への準備が加速し始めている。
長野県内では、北部や中部の利権政治家たちがルートを迂回させて我田引鉄を目論んだが頓挫した。
次は、停車駅の分捕り合戦。

飯田市周辺に駅が作られる可能性が濃厚ですが、現在の飯田市駅に併設することにはならないようです。
JR東海は高森町を想定している。
飯田市より北部の自治体のご機嫌伺いにもなるからかな。

リニア新幹線の路線は、現在の新幹線に取って代わるというよりも補完しつつ、現行新幹線の大改修に向けて準備しておくという点で必要性がある。
しかし、超伝導である必然性はない。
原子力発電に依存する「過剰電力供給」を前提にするリニア新幹線が開通する見込みはついていない。

レール方式のデメリットが広く論じられている様子は無く、リニアありきで計画が進んでいるが、そもそも国による整備計画や建設・営業主体のJR東海は単に「中央新幹線」と表記されている。
リニアは速度が魅力の一つだが、早けりゃエネルギーを浪費してもいいのかというと、社会の流れはそうではなさそうだ。
超音速旅客機として脚光を浴びたコンコルドも、幾多の短所が嫌われて結局は姿を消している。

原発と火力発電所が支える超伝導リニア新幹線が、開通見込みの2020年代後半になって来るとエネルギー革新の重荷となる。
国がリニアでもいいよと言ったとしても、環境が許さなければ計画の変更はありうる。

JR東海は、長野県内に駅を作るにしても、在来線との高速鉄道網の構築に対しては無視している。
ローカル線として名高い飯田線を高速化するつもりはなく、中央高速道路と接続した自動車での地域交通網を念頭においている。
この態度は鉄道事業者としては許しがたい。

これには長野県上伊那の自治体トップも責任がある。
飯田線の高速化を前面に出してこなかったからだ。
Bルートの誘致に失敗した今になって、ようやく飯田線を高速化したいと言っても遅いし、説得力が無い。

飯田線を高速化するためには、沿線住民に立ち退きを強いるからだ。
市町村長が、自分のところの飯田線沿線住民に複線化に伴う立ち退きを容認させられなければ絵に書いた餅になってしまう。
利権に溺れた政治家や土建屋だけでなく、一般市民も一体となった飯田線複線化への取り組みが無ければ実現しない。

JR東海は、このあたりの伏線をすでに熟知しており、複線化は言わしておけばいいと踏んでいるようだ。
田舎の市町村長がかなう相手ではない。
では、どうするか。

国会議員の出番ですね。
良いも悪いも、国会議員はこういうときのために選んでやっている。
私はそう思っていないが、多くの有権者はそのように思って使い勝手のいい候補者を国会に送り込んでいるはずだ。

国家プロジェクトは計画性や採算性で事業の方向が決められるのではなく、最終的には政治力がものを言う。
やはり、良くも悪くも世の中はそういう仕組みになっている。
近々、総選挙が勃発するかもしれないが、使い勝手のいい政治家を選ぶか、日本の将来を託せる政治家を選ぶか。
こういう選択肢を有権者が持つようになれば日本の未来にも道が開けてくると思うのだが。