・浄水方式の違いで料金格差

朝日新聞によると、須坂市では旧式の浄水場を復活して、
「安くておいしい水」を供給する検討に入ったそうです。
一方、駒ヶ根市では、老朽化した切石浄水場を新型の膜ろ過方式で新設することが決定しています。


自治体によって、浄水設備に対する考え方が正反対ですが、
どちらが良いのか、考えてみました。


須坂市の旧式浄水場は大正末期に建設されたものですが、「緩速濾過」と呼ばれるもので、
ランニングコストが掛からない上に、浄水効果が高く、美味しい水が供給できると、
文句のつけようがない。


80年前の旧式を復活させることで、

などの効果が期待されます。


緩速濾過と急速濾過の大きな違いは、設備に必要な面積です。
浄水場の敷地面積に制限がある都会では、広い面積が必要な急速濾過を選択したくてもできない事情があります。
しかし、比較的広い敷地が確保できる地方都市では、急速濾過を採用するメリットはありません。
すくなくとも、市民にとっては緩速濾過の方がメリットが大きいはずです。
急速濾過にメリットを感じるのは、設備会社です。


ではなぜ、駒ヶ根市は老朽化した切石浄水場の更新に新型の急速濾過の新設を決定したのでしょうか。
そのヒントは、設計担当者にあります。
設計は外部のコンサルタントに丸投げです。


駒ヶ根市まちづくり推進部水道課の平成17年度 建設工事発注予定及び入札結果によると、

長野市にある新日本設計というところが設計を担当したようです。
おそらく、この設計書には幕ろ過が採用されていたのでしょうね。
そして、市の担当者はそれを鵜呑みにして決定してしまった。


駒ヶ根市が、地価が高く、土地に余裕がなく、狭いスペースで大量の水を浄化する必要に迫られているのか?
そんなことはあるはずがない。
駒ヶ根市よりも基準地価が高い須坂市でさえ、緩速濾過を採用しているのですから。


駒ヶ根市の切石浄水場の完成翌年度から、水道料金は二段階に分けて5%程度の値上げが必要という。
須坂市では、値下げの可能性が出ている。
浄水場すべてが緩速濾過方式の上田市の場合、1立方メートル当たりの供給単価は須坂市に比べて30円以上安いという。


三木正夫須坂市長は「人口が減少する状況では、費用対効果を考えるべきだ」と話す。
市民の視点ですね。
中原駒ヶ根市長とはエライ違いだ。
エネルギーを大量に消費し、沈殿した泥を産廃処理し、修理費用がかさむ方式を採用したのですから、
駒ヶ根市長が狙う効果がどこにあるのか。(誰に向けているのか)


中原駒ヶ根市長が環境問題や地球温暖化対策に疎いのは、知る人ぞ知るですが、
企業を誘致して二酸化炭素の排出量を増加させ、市単独の温暖化対策もとらず、
公共施設のエネルギー削減にもまったく無関心では困ったものです。


須坂市長のつめの垢でも煎じて飲ませないと。

*1:80年前の大正末期に建設され、取り壊しを免れていた浄水場を、須坂市が「現役復帰」させる検討に入った。人口減などで水の需要も減り、新型浄水場の運営コストが重荷になってきた。しかも「旧式」は微生物の力を借りて水の臭みなどを取り除くことから、薬品を使う新型浄水場より「安くておいしい水」が期待できるという。昔の浄水施設の復活は全国的にも珍しく、財政難の地方自治体による「妙手」としても注目を集めそうだ。復活するのは1926(大正15)年に完成した「坂田浄水場」。底に砂を敷き詰めた濾過(ろ・か)池に、市内を流れる灰野川の伏流水を引き込み、砂の中に生息する微生物などの働きで汚れを分解する。これは「緩速濾過」と呼ばれる方法で、1日あたり3400立方メートルを処理する能力があった。急速な人口増が続くことを見込んで、市も約27億6千万円を負担した県の豊丘ダムが完成したのに伴い、1日9500立方メートルの処理能力を持つ最新式の「塩野浄水場」(事業費28億円)が96年に稼働。「坂田浄水場」は10年間、使用を休止していた。だが人口は、冬季オリンピックのあった98年の約5万4800人をピークに、05年までに1100人以上減った。96年に4万2千立方メートルと設定した1日当たりの計画給水量も、04年には3万2600立方メートルに下方修正された。「塩野」1個分の需要が減った計算だ。「塩野」では年間、ポンプで水をくみ上げるだけで電気代が700万円、濁りを沈殿させる「急速濾過」に使う薬品代に290万円、沈殿した泥を産廃処理するのに120万円かかる。さらに今年度予算では泥を集める機械の修理費に420万円も計上。税収が減っている市にとって軽い負担ではない。一方、「坂田」はこうした運営費がほとんどかからず、現役復帰によって水道料金引き下げの期待も出てくる。浄水場すべてが緩速濾過方式の上田市の場合、1立方メートル当たりの供給単価は須坂市に比べて30円以上安いという。三木正夫市長は「人口が減少する状況では、費用対効果を考えるべきだ」と話す。「坂田」が稼働を始めれば、「塩野」はトラブルがあった場合の「バックアップ用として維持することも選択肢」(市水道局)という。水道行政を所管する厚生労働省は「急速濾過の施設を休止し、緩速濾過を復活させる例は聞いたことがない」(水道課)としている。市は、緩速濾過(生物浄化法)の第一人者である中本信忠・信大教授に依頼し、「復活」に必要な作業の調査に乗り出す。中本教授は「財政難に直面した市が、業者任せにせず自ら考えて、緩速濾過の良さに気づいた意義は大きい。こうした自治体は今後、増えていくのではないか」と評価している。坂田浄水場の開設80年周年を記念し、市は20日午後2時から、市シルキーホールで中本教授の講演会などを開き、緩速濾過の意義などを市民に伝えることにしている。